ヨックモックはなぜ中東でバカ売れ中なのか 100個単位の"大人買い"は日常茶飯事

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かといって、日本で人気のあるまんじゅうやようかんなど、あんこ(豆)を使った和スイーツは逆に不人気。日本人が海外に行って甘い味付けのコメを敬遠するように、UAEでは甘い味付けをした豆はウケがよくないからだ。

その一方で、労働は自国内の外国人に任せ、自らは働かない・動かないという要因も加わり、2011年時点でほぼ5人に1人が糖尿病にかかっている。罹患率も世界第2位に達するほどの不健康な国でもある。その反動か、日本の甘さ控えめで上品な味が好まれるという背景もある。

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器に山盛りにした商品を丸ごと購入する客もいるという

中東の裕福な家庭では、子息を米国に留学させることも多い(娘は1人で海外へ旅行に出すことすらない)。ヨックモックは20数年前から米国にも進出しているが、米国でヨックモックを知って、ファンになったというエマラティ(生粋のUAE国民)も多い。

富裕層も上流になるほどヨックモックの認知度が高くなるという、不思議な構図ができあがっているのもそのためだ。そのようなエマラティは、来日するとシガールなどヨックモック製品を数十カートン単位でまとめ買いをして帰っていたという。

2012年にUAEに進出したきっかけは、現地のパートナー企業からの熱いラブコールに応えたという面もあるが、「数年前から何件も(共同で出店しないかと)お声がけをいただいていた」(髙橋氏)ことも大きいという。つまり、UAEに進出する前から、富裕層に人気が出るという土壌があったのだ。

「焦らずじっくり出店」

実際、アブダビに初めて店舗を出したとき、接客に立った髙橋氏が顧客の婦人に「いかがですか」と話しかけたところ、店側の人間とは思わないその婦人に「アナタ、この繊細な味を知らないの」と、逆に商品を勧められた。

「今後も出店数ありきではなく、ヨックモックの持つ雰囲気、手渡し販売という文化をわかっていただける地域に、焦らずじっくり出店していきたい」(髙橋氏)

UAEは言わずと知れたイスラム教徒の国。食品に関してはイスラム教の教えにのっとった「ハラル」が前提になるなど、宗教に関して曖昧な日本人には理解が難しい面も多い。だが、ヨックモックの躍進は、そのような異教の地でもいい物は受け入れられ、売れる物は売れるという証しなのかもしれない。

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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