もう、そういう悔しさを通り越して、とてもあたたかく優しい、よき映画だったと認めざるをえないのです(どこから目線)。
昨今のディズニー映画などでは最大の配慮をされているジェンダー表現からすると、少し気になる人もいるかなあと感じるのですが、役者さんも音楽も、そして何より絵が素晴らしく。
この年末年始の映画は『鬼滅の刃』『ポケットモンスター・ココ』『新解釈・三國志』の三つ巴と言われていましたが、公開直後の動員数は、そこに割って入る勢いだとか。
年末年始の家族映画に、そしてデート映画に、推します。絶対に、大画面で観たほうがいいタイプの映画です。
なぜ「プペル」に対して斜に構えてしまったか
さて、先ほど、私はこの映画のマーケティング戦略に乗せられている感が、ちょっと悔しくて、と書きました。
そう。ご存じの方も多いと思いますが、この映画ができるまでには、というか、この映画の原作にあたる絵本の制作の過程から、新しい制作方法やマーケティング手法が次々と打ち出されてきました。
たとえば絵本の制作時には、当時まだ先駆けだった、クラウドファンディングを利用して資金を集め、その資金を元手に総勢33名のクリエイターでの分業制を実現。細部まで緻密に描かれた絵を完成させました。
また、発売中の絵本をウェブで全ページ公開するマーケティングも話題になりました。この手法は今でこそ一般的になりましたが、当時は「無料で公開したものを、わざわざ買うはずはない」という意見が主流だったのです。
結果的に、絵本は12月現在で、57万部を超える大ヒット。これらの斬新な手法によって、コンテンツマーケティングにおいて、「西野以前、西野以降」という言葉を使う人がいるくらいです。
ただ、そのビジネスの裏側を西野さんが惜しみなくオープンにすることが、私たちに複雑な感情を呼び起こしました。
たとえば原画展に行って絵本を買ってしまうと、
「ああ、これが西野さんの言う『お土産消費』戦略ね……」
と思ってしまうし、クラウドファンディングの紹介文で心を動かされてしまうと、
「ああ、信頼をお金に変えるというのは、こういうことね……」
などと、余計なことを思ってしまうわけなのです。
いちビジネスパーソンとして、自分のコンテンツをどう売るかと考えたときには、「西野戦略」は、とても勉強になる。
しかしその一方で、いち生活者としては、「西野戦略」のいいカモになっている気がしてしまう。
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