タコが全身を使い感情を表せるという驚愕事実 知性を持っているという研究結果が明らかに

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そう考えると、表情は社会性と強いつながりをもつと考えることができる。そして、それらがヒトを含めた異なる動物の分類群で見られるということは、それが現れた古い時代から失われることなく維持されてきたことを意味する。進化の過程で喪失することがなかったのだ。

生物学的にタコは人間の祖先

誰が最初に表情という行動形態をもつようになったのだろう。誰が最初に赤面し、鬼の形相になり、笑顔を見せたのだろうか。

生物学的に考えれば、表情と考えられる行動を現世にあって表出する動物の祖先がその
候補になるだろう。タコ、そして親戚のイカだ。

頭足類と呼ばれる彼らがいつ地球上に現れたかは、必ずしも詳らかにされていない。軟体部しかない彼らは化石を残しにくい。これが古生物学的なアプローチを行う上では障壁となる。一方で、オウムガイや絶滅したアンモナイトなどその殻を化石に残す頭足類もいる。さらには、軟体部が丸ごと化石として残ることがある。まるで蛸煎餅に収まっているタコのように、タコの体が丸ごと化石として掘り出されることもあるのだ。

そのような情報からすると、頭足類の祖先はカンブリア紀辺りに地球上に出現したのではないかと考えられる。カンブリア紀はカンブリア大爆発で有名な、生物の多様性が一気に高まった時代だ。今のタコとイカの祖先となるものたち、つまりは鞘形亜綱の祖先がいつ頃現れたのかはよくわからず、古生物学者たちが精力的に調査を続けている。

『タコの知性 その感覚と思考』(朝日新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

およそ中生代くらいとの見方があるが、いずれにしても哺乳類や鳥類が出現するより前の太古の時代である。

もしも、そのような時代に現れたタコとイカの祖先が、すでに体表に色素胞と反射細胞をもち、神経を巡らせ、大きな脳と立派なレンズ眼を備えていたとしたら、彼ら祖先種もまた艶やかなボディパターンを表出していた可能性がある。外敵の接近に驚き、獲物の発見に沸き、同種他個体との遭遇に安堵や警戒の感を抱いたかもしれない。

そして、それらを漆黒や縞、目玉模様、あるいは体表のトゲトゲとして即座に表現していたかもしれない。自身の情動を現す表情が、太古の海に生きるタコの体から豊かに発せられていたかもしれないのだ。

池田 譲 琉球大学理学部教授

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いけだ ゆずる / Yuzuru Ikeda

1964年、大阪府生まれ。北海道大学大学院水産学研究科博士課程修了。2005年より琉球大学理学部教授。頭足類の社会性とコミュニケーション、自然誌、飼育学を研究。著書に『タコの知性 その感覚と思考』(朝日新書)、『タコは海のスーパーインテリジェンス』(DOJIN選書)など。

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