「今から始めても遅い」と思う人の大きな勘違い ある分野から別に移っても経験は無駄にならず
「偉業」の陰に「無数の失敗」がある
トップクラスのスポーツ選手の多くは、1つのスポーツに早くから特化していたわけではない。データがそれを示している。そのことを、私が話したり書いたりし始めた時、聴衆の反応(特に子どもを持つ人たちからの)はだいたい次の2通りだった。
(1)「そんなわけない」と言って単純に信じない。
(2)「じゃあ、どうすればいいのか、一言でアドバイスしてほしい」と求める。
自分にとって最適な場所にたどり着きたいなら、実験の旅に出なければならない。そのことと、幅(レンジ)を持つことを一言のアドバイスに入れ込むとしたらどう言えばいいだろうか。
メディアで語られるイノベーションや自己発見のストーリーは、A地点からB地点までのシンプルな道筋のように聞こえる。たとえば、何らかのインスピレーションを受けてトップアスリートへの道を歩んできた、といった単純明快な説明だ。
たとえば、タイガー・ウッズが成功に至る道筋に、寄り道や、振れ幅や、実験はほとんど存在しない(「幼児からの超英才教育『意外な落とし穴』の正体」、2020年4月7日配信)。タイガーの育て方が人気なのは、そのやり方がシンプルで、不確実性が低く、効率が良いからだ。それに、誰もがタイガーのように他人に先んじたい。
これに対して、実験を続ける道筋はシンプルなものではない。しかし、それは多くの人が歩む道で、実は得るものも多い。ただし、そこでは「失敗に負けない力」が強く求められる。実験の中で生まれるブレークスルーには、大きな振れ幅がつきものだからだ。
ディーン・キース・サイモントンのクリエイティビティーの研究によると、優れたクリエーターは、生み出す作品が多ければ多いほど失敗作が増えていき、同時に画期的な作品を生み出す可能性も高まる。
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