「今から始めても遅い」と思う人の大きな勘違い

ある分野から別に移っても経験は無駄にならず

「回り道」こそが人生成功の秘訣だ(写真:metamorworks/iStock)
現代はビジネスでも、研究開発でも、分野を狭い範囲に絞って深掘りする「超専門化」がもてはやされている。
ところが、米国の著名ジャーナリストのデイビッド・エプスタインは著書『RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる』で、こうした超専門化の風潮に警鐘を鳴らす。逆に、知識や経験の「幅(レンジ)」が今こそ重要であり、早期の専門特化ではなく一見非効率に思える「人生の回り道」にこそ、成功の秘訣があるという。その理由は何か、本書を一部抜粋のうえ、再編集してお届けする。

「偉業」の陰に「無数の失敗」がある

トップクラスのスポーツ選手の多くは、1つのスポーツに早くから特化していたわけではない。データがそれを示している。そのことを、私が話したり書いたりし始めた時、聴衆の反応(特に子どもを持つ人たちからの)はだいたい次の2通りだった。

(1)「そんなわけない」と言って単純に信じない。
(2)「じゃあ、どうすればいいのか、一言でアドバイスしてほしい」と求める。

自分にとって最適な場所にたどり着きたいなら、実験の旅に出なければならない。そのことと、幅(レンジ)を持つことを一言のアドバイスに入れ込むとしたらどう言えばいいだろうか。

メディアで語られるイノベーションや自己発見のストーリーは、A地点からB地点までのシンプルな道筋のように聞こえる。たとえば、何らかのインスピレーションを受けてトップアスリートへの道を歩んできた、といった単純明快な説明だ。

たとえば、タイガー・ウッズが成功に至る道筋に、寄り道や、振れ幅や、実験はほとんど存在しない(「幼児からの超英才教育『意外な落とし穴』の正体」、2020年4月7日配信)。タイガーの育て方が人気なのは、そのやり方がシンプルで、不確実性が低く、効率が良いからだ。それに、誰もがタイガーのように他人に先んじたい。

これに対して、実験を続ける道筋はシンプルなものではない。しかし、それは多くの人が歩む道で、実は得るものも多い。ただし、そこでは「失敗に負けない力」が強く求められる。実験の中で生まれるブレークスルーには、大きな振れ幅がつきものだからだ。

ディーン・キース・サイモントンのクリエイティビティーの研究によると、優れたクリエーターは、生み出す作品が多ければ多いほど失敗作が増えていき、同時に画期的な作品を生み出す可能性も高まる。

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