「今から始めても遅い」と思う人の大きな勘違い ある分野から別に移っても経験は無駄にならず
トーマス・エジソンは1000件以上の特許を持っているが、大半は取るに足らないもので、却下されたアイデアはもっとあった。エジソンは数多くの失敗をしたが、大成功した発明には、電球、蓄音機、映写機の前身などがあり、どれも世界に衝撃を与えた。シェイクスピアには、『リア王』や『マクベス』などの作品もあるが、『アテネのタイモンの生涯』など、あまり評価されていない作品もある。
アタリのゲーム・デザイナーだったハワード・スコット・ワーショウは、とても制約の多い技術を要領よく使って、『ヤーの復讐』というゲームを制作した。これはゲーム機「アタリ2600」向けのオリジナル・タイトルとしては1980年代前半で最もよく売れた。当時、アタリはアメリカで急成長している企業だった。それとまさに同じ年、ワーショウは映画『E .T .』のゲーム版を制作した。その時もワーショウは限られた技術で実験をした。しかし、このゲームはビデオゲーム史上最大の商業的失敗とまで言われ、アタリの突然の崩壊の原因となったという指摘もあるくらいだ。
打席に立てば時には1000点をたたき出せる
シンプルではない実験の旅はこんな感じだ。独創的なクリエーターは何度も三振するが、大きな満塁ホームランも打つ。ただし、野球のたとえは正確ではない。ビジネス・ライターのマイケル・シモンズによると、「野球の結果は『切れた分布』になっている。バットを振って、どんなに当たりがよくても、得られる最大の得点は4点だ。しかし、広い世界では、「打席に立てば、時には1000点をたたき出すことがある」。
だからと言って、ブレークスルーが運だということではない。運も助けになるが、ブレークスルーはむしろ困難で一貫性がないものと捉えられる。誰も経験がないことをするのは、意地悪な問題に向かい合うことであり、公式もなく、完璧なフィードバックの仕組みもない。実験の旅は株式市場のようなものだ。天井知らずの値上がりを狙うのであれば、安値の時期にも耐えなければならない。イノセンティブの創業者、アルフ・ビンガムが言ったように「ブレークスルーと誤った考えは、最初はよく似ている」。
私が探求しようと決めた問いは、「超専門特化がますます求められ、また自分が本当にやりたいことがわからないうちに何になるかを決めなければいけない中で、幅(レンジ)や多様な経験や領域横断的な探求を、どうやって実現するのか」ということだ。
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