第2波で躓いたスウェーデンの大変な「その後」 コロナ対策独自路線を貫いていたが医療が逼迫

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ただ、当局が行っているのは、あくまで「お願い」であり、「命令」ではない。スウェーデンの法律では、政府が人々に外出禁止を強制したり、勧告に違反した者に罰金を科したりすることはできない。

スウェーデンより感染率が低いオランダは15日に全土ロックダウンへと突入。ドイツでも16日から、ほぼ全土を対象としたロックダウンが始まっている。しかし、スウェーデンのレストランやコーヒーショップ、バーは今も営業を続けている。

スウェーデン当局はマスクの着用も推奨していない。公衆衛生局がマスクの効果を示す科学的エビデンス(証拠)が十分にそろっていないとしているためだ。

14日、ストックホルムでコーヒーとお菓子を出す「シック・コンディトリ」という店は客で満員だった。そこで友人2人とコーヒーを楽しんでいた金髪フェザードヘアの大学生、テア・カグストロムさん(18)にマスクをしていない理由を尋ねると、こんな答えが返ってきた。義務じゃないから——。

「公衆衛生局は、公共の場でマスクを着けるようにとは言っていませんよね」(カグストロムさん)。

マスクすら推奨しない異端政策

政府は感染拡大時にロックダウンや休業を命じられるようにする緊急事態法の取りまとめを進めている。それでも政府に批判的な人々からは、もっと厳しい措置を求める声があがっている。

「新規感染者数を下げるには数週間のロックダウンが必要だ」とストックホルム近郊にあるウプサラ大学のトーベ・ファール教授(分子疫学)は話す。「他国はスウェーデンより感染率が低い段階から、はるかに厳しい対策を講じている」。

マスクが使用されない現状にも、いら立ちの声があがる。「マスク着用を推奨していない民主主義国は、全世界を見回してもスウェーデンだけだ」と、前出のエルグ教授は語った。「世界では170を超える国がマスクの着用を推奨している。それでも、この国の当局はマスクの効果は科学的に十分に証明されていないと言う。ばかげていますよ」

(執筆:Thomas Erdbrink記者、Christina Anderson記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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