第2波で躓いたスウェーデンの大変な「その後」 コロナ対策独自路線を貫いていたが医療が逼迫

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テグネル氏は10月に、こう語っていた。国民の間で免疫が広がることで、スウェーデンは感染を低い水準にとどめながら秋を終えられると期待している——。ロベーン首相はスウェーデンのアフトンブラーデット紙のインタビューで次のように語った。「大半の専門家は第2波が来るとは考えていなかったと思う」。

今やスウェーデンのコロナ対策では政治家の関与が強まり、テグネル氏率いる公衆衛生局はコロナ対策で全面的に采配を振るうことは許されなくなっている。テグネル氏が政治家と調整を行わなければならなくなる場面も増えた。

感染者数と死者数は10月以降、ともに増加が続いている。パンデミックが始まってからの累計感染者数は15日時点で32万人を突破。これに対し隣国フィンランドの人口はスウェーデンの約半分だが、累計感染者数は3万1110人とスウェーデンの10分の1未満にとどまっている。

スウェーデンの死者数は15日に累計で7667人に達した。感染者10万人当たりでは74人と、97人のイギリスよりは少ないが、隣国ノルウェーの7人を大きく上回る。

看護師の大量離職で医療はさらに逼迫

「残念ながら、状況はこれからもっと悪くなる」。こう話すのは、ストックホルム南総合病院の集中治療室で働く心臓専門医カリン・ヒルデブランド氏だ。「次週以降どうなるか、私たちみんなが恐れている。対応できるスタッフが足りない」。パンデミックが始まって以降、スウェーデンの病院では看護師の大量離職が起きている。

そして今、政府は対応不足で非難を浴びている。

「状況が深刻化したことで対応が変わると期待したが、政府はスキー場の営業を許した」と、政府のコロナ対応を批判してきたことで知られるウメオ大学のフレドリック・エルグ教授(臨床ウイルス学)は語る。「政府は私が望んできた厳しい措置に踏み出しているとは思えない」

ロベーン政権は感染拡大に歯止めをかけようと11月下旬に規制を強化し、8人を超える集会を禁じた。

16歳未満の生徒が通う学校は休校とはされてこなかったが、感染急増を受けて一部が休校になった。午後10時以降のアルコール提供も禁止された。さらに今月14日には、政府機関が国民の携帯電話にショートメッセージを一斉配信し、クリスマスの集まりは最大8人までとするよう警告した。

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