「イタズラする犬」のストレス耐性を育てる技術 「小さな経験」を積み重ねることが重要

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犬同士のコミュニケーション、人同士のコミュニケーションでも、相手に不快を予測させるシグナルを出すことによって、意志を伝えることがよくあります。

犬同士の縄張り争いで牙を見せうなることで、縄張りを主張し、片方が譲り、片方が権利を得ます。食料やおもちゃを争ってうなることもあるでしょう。うなることで、その後かまれるかもしれない、怪我をするかもしれないという状況を予想させ、それが抑止力になり、コミュニケーションが成立します。

人間の社会でも法律や倫理などのルールがあり、そのルールを逸脱すると社会的な罰を与えられると予測しているからこそ、ルールを重んじて生活できます。

犬と人の社会においても、不適切な行動があり、飼い主がその行動をけん制するからこそ、犬がその行動を抑制しようと思うのです。

大きなストレスを回避するために

社会的な不快がまったくない世界であれば、物理的に選択可能な行動のなかで何をやっても良くなります。プラグをかじったら、自然の結果として感電し、不快な思いをすることで、その行動はなくなるかもしれません。

けれども、感電すれば場合によっては死んでしまうかもしれない。感電して、自分で学ぶ前に、ストレスがかかったとしてもきちんと制止していれば、感電することは避けることができるはずです。

犬という命を預かっている以上、やってはいけないこと・危険なことに対して、「ダメ!」と止めることは必要です。それは、大きなストレスを回避するために小さなストレスを与えることを指します。

それを忌避して放置することは、問題行動を発生させる原因のひとつです。飼い主が犬の行動を管理できないために、犬が小さな不快を感じる度に飼い主に吠えやかみつきで要求するようになることもあります。

人と犬が共生している以上、人と犬の共生の観点から、飼い主が犬の不適切な行動を抑止する必要は少なからずあるといえるでしょう。

人と犬が共に暮らす以上、コンセントのプラグのような利害の衝突は無数に存在し、犬にとって我慢しなければならない場面はいくつもあります。我慢とは、「少し先の報酬を得るために、目の前にある報酬を獲得する行動をとらないこと」を指します。

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