ビジネスプランは死語、A4一枚で起業できる アイデアはプレゼンでなくピッチで売り込め

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一方、ピッチは、初対面の人、これから伝える内容をはじめて聞く人、時には関心も興味もない人に対して行う。そのため、補足が必要な専門用語はなるべく使わず、ロジックというよりも直感で理解してもらえるくらいにわかりやすく伝える。ピッチを行うのは、会議室とは限らず、立食パーティーでの会話中ということもあれば、エレベーターで居合わせた人に対して実施することすらある。「30秒バージョン」「1分バージョン」「3分バージョン」、この3つのパターンを用意しておくのが一般的だ。

投資家は第一印象を0.1秒で決める

30秒のエレベーター・ピッチで、「私はこんなアイデアをもっています」と手早く訴えて、相手が「もう少し聞かせてくれ」と興味をもったら、相手のくれる時間に応じて説明を追加する。ピッチの目的は興味をもってもらい「また話を聞きたい」となって、次のミーティングを設定することにある。

ピッチは起業家にとって、必要不可欠な技能である。その技能の優劣によって、資金調達に成功したり失敗したりする。さまざまな状況で、チャンスを逃さず対応できるように準備をしておくことが重要だ。

投資家は起業家のピッチの何を見ているのか。

1番はビジネスモデル。次に、「その起業家が本当に信用できる人なのかどうか」「聞く耳をもっている人かどうか」ということ。

そのため第一印象が重要だったりもする。その人のもつエネルギー、動き、服装といったことから得られる第一印象は0.1秒で決まると言われている。第一印象の93%はノンバーバル、すなわち言葉以外の行動(姿勢、立ち姿、握手の仕方、アイコンタクトの取り方)で決まる(バブソン大学アクセラレータプログラムのリサーチデータより)。

ピッチの最大の必敗は、Call to Action(行動喚起)がないこと。つまり、「何が欲しいのか」が明示されず、「私たちの考えているビジネスはこんなものです、すごいでしょう」と言って終わるケースだ。「この部分をなんとかしたいから資金をください」「この点を解決したいので、誰か紹介してください」など、欲しいことを必ず明示する。こうして投資家はもちろん、協力者、ファンを増やすことは、起業の三原則のうちの1つ「人を巻き込む」につがる。こうした動きが小さなさざ波をつくり、ほかのさざ波と交わって、大きな潮流をつくることになる。

頭の中で練り直す「構想」よりも、試作品や事業のイメージが伝わるものをもって人に聞いて回る「行動」こそ成功への近道だと述べたが、ピッチも同様だ。自分のアイデアを、いつでもどこでもピッチし、フィードバックから学び、成功につなげていく。

自分の踏み出した小さな一歩が、身の回りの世界を変え、やがて世界に大きな変革をもたらす。これこそが、起業の醍醐味だと思う。

山川 恭弘 バブソン大学アントレプレナーシップ准教授

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やまかわ やすひろ / Yasuhiro Yamakawa

バブソン大学アントレプレナーシップ准教授。東京大学教授。ベンチャーカフェ東京代表理事。CIC Japanプレジデント。
慶應義塾大学法学部卒業後、エネルギー業界にて新規事業開発に携わる。ピーター・ドラッカー経営大学院にて経営学修士課程(MBA)修了。テキサス州立大学ダラス校にて国際経営学博士号(Ph.D.)取得。バブソン大学では、学部、MBA、エグゼクティブ向けに、起業道・失敗学・経営戦略を教える。ベンチャー数社のディレクター・アドバイザーも務める。

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大前 智里 脚本家

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おおまえ ちさと / Chisato Omae

大阪大学経済学部卒業後、東洋経済新報社勤務を経て、脚本家に転向。作品に、「松本清張ミステリー時代劇」(BSテレ東、2015年)、「マネーの天使」(読売テレビ、2016年)、「小説王」(フジテレビ、2019年)など。「山本周五郎時代劇 武士の魂」第一話大将首(BSテレ東、2017年)で日本民間放送連盟賞番組部門〈テレビドラマ番組〉優秀賞受賞

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