戦前は寛容だった?「浮気とお金」の奥深い歴史 妾を持つことがある種のステータスだった

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一夜限りの浮気とは異なり、妾や愛人は継続的に囲い続けなければなりません。先立つものはカネ。住む家を借りてやり、生活費もすべて渡すのです。本当の家族を養うのと変わらない費用がかかります。

お金持ちでないとできないからこそ、妾を持つことがある種のステータスとみなされて、「男の甲斐性」なんて言葉で正当化されてきたわけです。

戦前の社長が妾を何人も持てたのは、やっぱりそれ相応の所得があったから。戦前はいまとは比べものにならないくらいの格差社会でした。大手銀行や一流企業の社長ともなると、庶民とはケタ外れの格差がありました。

昭和初期、平均的庶民サラリーマンの月給は100円が相場だったと、岩瀬彰さんが『「月給100円サラリーマン」の時代』で述べています。いまの貨幣価値に換算するのに2000倍説を採用すると、月給20万円といったところですか。これでは妾を持つなど夢のまた夢です。

戦前の一流企業の社長は年俸2億円!?

では戦前の一流企業に勤めるエリートの待遇はどうだったのか。1954(昭和29)年7月15日号の『実業之日本』で某会社社長がかなり具体的な数字をあげています。重役でない社員の最高月給は500円くらいだったとのこと。戦前の一流企業は年に1万円もの破格のボーナスを支給することがありました。てことは年俸となると1万6000円に跳ね上がります。

これが重役に出世すると年俸4万から6万円、さらに社長ともなれば、年俸10万から15万円だったというから、今なら年俸2億円以上です。しかも戦前は税金が安かったので手元に7割は残ったらしい。これだけウハウハだったら、妾の2人や3人囲えちゃいますね。

戦後になっても社長たちの浮気心は変わりません。しかし社長をめぐる状況は一変してしまいました。戦後の日本では、三等社長といわれるサラリーマン社長が主流になり、社長の待遇が戦前とは激変します。

貨幣価値がかなり変わったので単純比較は難しいけれど、さきほどの記事の社長は、実感として一流企業の社長の給料は戦前の4分の1以下になったといってます。しかも戦後は極端な累進課税によって、高所得者は稼ぎの6割以上を税金で持って行かれるようになりました。

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