戦前は寛容だった?「浮気とお金」の奥深い歴史

妾を持つことがある種のステータスだった

日本のサラリーマンの浮気事情は、戦前と戦後で大きく変わっています(写真:Kazpon/PIXTA)
明治時代に誕生した給与生活者という階層は、大正時代の中頃に、「サラリーマン」なる珍奇な名を得て、おなじみの存在となりました。それからおよそ100年。トンデモ社長にズボラ社員をはじめ、今も昔もサラリーマン世界は突っ込みたくなることばかりです。
最近は芸能人の浮気がよく報道されていますが、日本のサラリーマンの浮気事情はどのような変遷をたどってきたか、気になりませんか。今回は大衆文化を調べ上げてきた自称イタリア生まれの日本文化史研究家、パオロ・マッツァリーノ氏の著書『サラリーマン生態100年史』を一部抜粋・再編集し、戦前・前後における日本人の浮気の歴史とその背景にある当時の経済事情を解説します。

妾をたくさん囲っていた渋沢栄一

私が好きな経済人、渋沢栄一は女性好きでした。明治時代、日本経済の基礎をすべて作ってしまう大活躍と並行して、孤児院から近所の火事見舞いまで慈善事業にもやたら熱心。妾をいっぱい囲っていたのも、慈善事業の一環……?かどうかはともかく、妾の子も多数養育していたはずです。奥さんがいるのに、自宅に妾を同居させていた時期もあったほど。

渋沢の奥さんはのちに、「『論語』に入れ込んでいた渋沢は都合のいい教典をみつけたものだ」と皮肉っています。もしもキリスト教の聖書だったら女遊びは許されないからね、と。

ユーモアのセンスがあって素敵な奥さんですが、ちょっとカン違いされています。孔子も女遊びには批判的なんです。渋沢はその辺はごまかしていますけども。

賛否は別として、戦前までは、富と地位を手にした男が妾を囲うのはごく普通の習慣だったってことは史実として知っておいてください。

ただし、明治大正期にも進歩的な考えの女性たちはいて、妾という風習を批判していたんですけどね。明治になってまもなく、政府もいったんは妾を公認したものの、明治15年の刑法改正、31年の民法改正によって再び日陰の存在に戻されます。

男たちのほうも、妾の存在をおおっぴらには自慢していません。そこまでやったら野暮ってもんです。世間の目をはばかりながら妾宅に通うのがマナーです。そして周囲の人々も、見て見ぬフリをするのが粋なお約束。

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