お金ありも人柄もいいが、結婚に至らない理由
昨年の今頃、日本の南西に当たる観光で有名な島から飛行機に乗って、矢島恒夫(47歳、仮名)が、面談にやってきた。大きな手提げ袋の中からチョコレートやクッキーの大箱を出すと、言った。
「つまらないものですけど、お土産です。皆さんで食べてください」
「まあ、こんなにたくさん! ありがとうございます」と私が言うと、純朴な笑顔を向けてきた。身長が高くふくよかな体型。いかにも人のよさそうな雰囲気の男性だった。
「ここ3、4年、結婚を本気で考えるようになって、婚活を始めたんですが、なかなかいい出会いがないんですよ。土地柄、周りは結婚が早い。身近で候補者を探すことには限界を感じまして、全国の女性を対象にお見合いをしようと。私との結婚を考えてくれる女性がいるなら、飛行機に乗って日本全国、どこにでも会いに行こうと思っています」
物腰は柔らかかったが、決意は硬いようだった。そして、こんなことも言った。
「婚活期間中は、そこに使うお金は惜しみません」
聞けば、地元での商売がうまくいっていて、年収も1000万円近くあるという。さらに海沿いにリゾートマンションを2棟所有し、その賃貸料金も入ってくる。それ以外にも株の配当が毎年あるようだった。
入会の手続きを済ませ、お見合い写真をスタジオで撮影して、恒夫の婚活がスタートした。
普通ならこれだけの条件が揃っていれば、お見合いはいくらでも組めるのだが、恒夫の場合は結婚したら女性が島に移り住まなければならない。観光開発され、独自の食文化もあり、中心地は都会と変わらない繁華街になっているが、女性側も遠方に嫁ぐには、相当の覚悟がいる。
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