やっと女性が現れ、天ぷらのコースがスタートした。野菜、キノコ類、魚介のコースが一通り終わると、「この後は、よろしかったらお好みでご注文ください」と板前が言った。すると、彼女は、高級食材の天ぷらを、5、6品追加注文したという。最後にご飯とお新香とお味噌汁でしめて終了。そして、お会計となった。
「レジでお金を払おうとして、びっくりしました。5万円でいくらもお釣りが来ない金額だったんです。慌ててカードで支払いをしました」
また、食事を終えてからカフェでお茶をしたのだか、そのときの会話に、憤慨と脱力を感じたという。
「『私は、この先5年くらいは結婚する気はない』っていうんです。43歳の女性が、ですよ! で、『そういう私を待ちきれなくて2股かけるなら、それでもかまわないですよ』と。結婚相手を真剣に探している。だからお見合いしたんじゃないのか! これじゃあ、ただのメッシー君じゃないか!! あ、メッシー君なんて、もう死語ですかね」
そして、その食事以来、恒夫はバカらしくなって彼女には連絡を入れなくなった。すると、向こうからの連絡もなく、自然消滅的に関係が終わった。
「生活費は30万円ください。あなたは通い婚で」
“天ぷら女性”との関係が終わった頃、知人から同じ島に住む42歳の女性を紹介された。彼女は島で生まれ育ったが、東京で就職。その後結婚をし、子どもを2人授かった。しかし、旦那が浮気をして離婚。子どもを連れて島に戻ってきていた。
「会ったときから、すごく積極的な女性でした。結婚の具体的な話をしてきて、『あなたさえよければ、すぐに結婚してもいい』と。だけど、話を詰めていくうちに、何か言ってることがおかしいと思うようになって」
彼女は今仕事をしていて、毎月20万円の収入がある。別れた元夫から毎月10万円の養育費が振り込まれていて、1カ月30万円で生活をしている。再婚したら、元夫からの養育費もストップするだろう。仕事を辞めて専業主婦になりたいので、生活費を保証してほしい。
「つまりは30万円を毎月家に入れろということですよね。それは私の今の経済状況ならできる。でも、彼女が言う結婚生活というのが、『今の暮らしは変えたくないから、私と子どもたちは今の家に住むので、あなたは週末に私たちの所に通ってくる週末婚にしましょう』と。さらに、『もしも2人の間に子どもが生まれたら、私と子ども3人は今の場所で暮らして、あなたは通い婚を続けてください』って言うんです。こんなバカげた話がありますか?」
真顔でこの話をする女性を前に、“この人との結婚はない”と判断した。
「私の商売は地場産業。地元に根ざしている仕事なので、今住んでいる所を離れるわけにはいかない。もっと自由に身動きが取れればいいのかもしれないけれど、家業だし、今の仕事で今の収入を得ているのだから、仕事を変わるわけにはいかない。『だったらあなたが私のところに通ってくる通い婚ですよ』と言われても、それには納得できませんよ。生活するためのお金を出すのは私なんですから」
“30万円通い婚女性”との縁が終わった頃、今度は大学時代にお世話になった教授から、縁談を持ちかけられた。相手は43歳の女性。
「『相手の女性に渡す“釣書”を作りなさい』って、言われました。パソコンで打ったものは、正式じゃないからダメ。和紙に毛筆で、住所、氏名、生年月日、職歴、家族構成などを書く、昔ながらの身上書。和紙と筆ペンを買って、一生懸命に書きましたよ。そして、写真を添えて、教授に渡したんです」
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