北の地で生まれた女性が、親や友達と別れて南の地に永住をするのは一大決心だ。また、都会で生まれ育った女性の場合、島での暮らしを現実のものとして捉えたときに、二の足を踏んでしまうだろう。
そんな中でも恒夫は果敢に申し込みをかけていき、昨年の8月までは毎月いくつかのお見合いをしていた。しかし、2、3回のデートを終えると交際終了となり、結婚に結びつく相手にはなかなか巡り会えずにいた。
ところが、9月に入ってからはサイトで申し込みをかけることが少なくなった。気になったので、「お見合いの申し込み、どんどんしましょうね」と連絡を入れていたのだが、「はい、申し込みします」という返信は来るものの、お見合いをすることもなく、昨年は終わってしまった。
年が明けて、九州で1つ、お見合いが組めた。それを終えたら、東京に来るという。久しぶりなので時間をたっぷりとって面談をすることにした。
紹介見合いで来た女性の非常識ぶり
事務所にやってきた恒夫は、また紙袋いっぱいのお土産を持ってきてくれた。
「毎回同じようなものですけど、皆さんで食べてください」
どこまでも人がよく純朴だ。しかしこれが、婚活市場ではあだとなってしまったようだった。
恒夫はソファに腰をかけると、この4カ月間にあった出来事を語り出した。サイトでのお見合いを休んでいたのは、知り合いに紹介をされた女性たちと会っていたからだという。
「3人と会いました。それがもう散々な目に遭って」
まず9月に会ったのは、都内の一流ファッションブランドに勤める女性。東京に住む恒夫の伯父が加入している保険のセールスレディからの紹介だったという。
「初めてのときは、伯父さん、その女性、私の3人でホテルのラウンジで会いました。都会的な雰囲気を持ったオシャレな人で、“こんな人と結婚できたらいいな”と思いました。男は、やっぱりきれいな人には弱いですからね」
その日の別れ際に、「今度お食事に行きませんか」と誘うと、「はい、ぜひ」という返事が返ってきた。連絡先を交換して別れ、その2週間後に再び上京してデートをした。
「都内のドイツ料理のお店でランチをしました。私が過去に何度か行ったことのある店を予約したんです。待ち合わせがお店の前だったのですが、12時直前に、『仕事で遅れます』という連絡が入ってきた。『待っていますよ』と返信したものの、どのくらい遅れるかはわからなくて、来るか、来るかと待っていたら、40分近く遅刻してきました。私は立ちっぱなしですよ。で、来たときに少しムッとしたんですが、食事をしたら会話は楽しかった。そこで、次に会う約束をして、その日は別れました」
次のデートは翌月に入ってすぐだった。前回は自分が店を選んだので、「どこか行きたいお店があったら、そこにしましょう」と、店選びを任せた。すると、都内の天ぷら屋を指定してきたので、そこを予約した。当日地図を頼りに行ってみると、店の前に看板が出ていない。潜り戸を入って行くと、カウンターだけの小さなお店で、知る人ぞ知る超有店だった。
「雰囲気だけで高級な店だとわかりました。案内された予約席で待っていたのですが、時間になっても来ない。その日も30分遅刻をしてきました。その間、お店の人に『すいません』と謝りっぱなし。で、待っている間はやることがないので、メニューを見せてもらおうかと思ったら、その店にはメニューがないっていうんです。すべてがお任せ。ドリンクメニューはあったのですが、初めて見るような銘柄のお酒ばかりが載っていて、どのお酒にも値段が書いてありませんでした」
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