戦前は寛容だった?「浮気とお金」の奥深い歴史 妾を持つことがある種のステータスだった
小説『三等重役』の桑原社長は、いきつけのバーのマダムが月3万円のお手当てでパトロン募集中とのウワサを耳にして、スケベ心がうずきます。地方都市とはいえ一流企業の社長たる自分には、それくらいのことは許されるだろうと考えるのです。
当時は大卒の初任給が1万円程度。総理大臣の月給でさえ6万~8万円の時代です。バーのマダムがどんないい女なのか知らんけど、月3万円はかなり強気ですね。でもそれを払えると胸算用しているくらいだから、桑原社長は月にウン十万円はもらっていた設定なのでしょう。
戦後、住友生命の重役に抜擢された小松正鎚は『三等重役』を読み、社長の待遇がよすぎると感想を述べています。自分ら若手の三等重役は、経費削減のために移動の列車も満員の三等車を利用したし、財力や貫禄を誇示するようなでっぷり太った重役イメージとも無縁だった、と。
戦後は愛人も経費で落とす
戦前は当たり前すぎてスルーされていた社長の下半身スキャンダルも、戦後はマスコミのネタにされる機会が増えて、進退に影響するケースも出てきます。とはいえ昭和はまだエロに寛容な時代でした。
社長に愛人がいることが単独で報道されたことはほとんどありません。たいていは、倒産・脱税・粉飾決算などの事件が報道される際に、ついでに愛人関係まで暴露されていくパターンです。
戦後は社長の収入が減ったせいもあるのか、妾宅を借りて妾を囲うような仰々しいやりかたは廃れ、お手当てで愛人契約を結ぶ方法が主流になります。愛人側もひとりのダンナだけから多額のお手当てを得るのはむずかしく、複数の男と愛人契約を結ぶようになったので株式方式などと揶揄されることも。
残念なのは、戦後の社長は器が小さくなったこと。戦前のように法外な給料がもらえないものだから、愛人のお手当てを会社の経費で落とそうとする輩が増えました。
セコいでしょ。浮気を男の甲斐性などとイバれるのは自腹切るからであって、会社のカネを使ってたら甲斐性でもなんでもない。それどころか横領です。犯罪ですよ。
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