売れ続けるスタバが自らに課す「暗黙のルール」 彼らは「成長の病」の恐ろしさを知っている
スターバックス(以下、スタバ)の広告を見たことがある人は、いないだろう。
スタバは広告をほとんど出さない。スタバは「店舗のスタバ体験そのものがマーケティング活動だ」と考えているからだ。
白いカップで出されるコーヒー、従業員と顧客の交流、店の雰囲気、コーヒーの香り、スタバのひととき。これら一つひとつが、スタバのマーケティング活動なのだ。
スタバはフラペチーノのテレビCMをしたことがあるが、効果が出ずにすぐに中止。テイスティングを続け、お客様との交流を深め、売り上げを増やした。
スタバ創業当初はお金がなく、広告を出さなかった。しかしスタバは、大きくなるにつれて「クチコミが最大の広告」と気がついた。これは必ずしも広告の否定ではない。スタバは「ブランド育成には、広告よりも有効な手段がある」と考えているのだ。広告に回すお金があれば、メニューに個性的なドリンクを増やし、店内環境を充実させ、サービスのスピード向上のため従業員を増やす。
お客様の体験を生み出すことが、一番のマーケティングだと考えているのだ。広告をしないので、客からも「誠実で信頼感が高い」とさえ言われるようになった。
このようにスタバ社内には、口伝のマーケティングの知恵がある。このスタバの口伝の知恵を紹介したのが『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?』だ。著者のジョン・ムーアはスタバで8年間マーケティング・プログラムの作成と実行に携わり、現在は企業へコンサルティングを行っている。
本書はブランディングの学びの宝庫だ。そこで本書からポイントをいくつか紹介したい。
新しいブランドでなく、新しいカテゴリーを創れ
スタバ創業は1970年代。当時、米国のコーヒーはマズかった。米国コーヒー業界が際限のない価格競争に陥っていたからだ。スタバはこの業界で急成長し、強いブランドを創り上げた。「どこにでもある一杯のコーヒー」を「他にないもの」にしたスタバの歴史には、ブランディングの学びが詰まっている。
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