ニッポン大企業の内憂外患

拡大
縮小

2008年度5%減益 輸出減、原料高が襲う
日本企業を襲う7つの悪材料

「2008年度の日本企業は減益になる」。こう予想するのはゴールドマン・サックス証券の山川哲史チーフ・エコノミスト。東証1部上場企業は07年度5・0%の経常増益を確保するが、08年度には一転して5・0%の減益になるというのだ(金融を除く)。非上場企業を含むベースでは08年度7・0%の減益を見込む。「国内消費の停滞が続くうえに、中国向け輸出の減速が予想される。原料高も一段と利益を圧迫するだろう」(山川氏)。

日本企業は内憂外患に襲われている。米欧景気の悪化、円高、原油高といった外部環境の悪材料だけでなく、建築基準法改正など国内要因も足を引っ張り、さまざまな業界に深刻な影響を与えている。

最高益更新から1割程度の減益へ一気に暗転するのが自動車業界だ。理由は円高。07年度の為替は通期平均で1ドル=114円、1ユーロ=161円近辺。だが、08年度は1ドル=105円、1ユーロ=150円前後が予想される。1ドル1円の円高で年間約350億円の営業利益が減少するトヨタ自動車は、この円高で3810億円の営業利益が吹き飛ぶ計算になる。07年度の営業利益見通し(2兆3000億円)の17%にも及ぶ減益規模だ。ホンダや日産でも1500億円程度、2割近くの減益要因となる。

ただ販売台数ベースでは、新興・資源国向けの伸びで増勢を維持する見通しのため、自動車メーカーからは強気の声も聞かれる。トヨタ自動車の財務担当・鈴木武専務は「総販売台数は伸びるし、来期も全体の収益構造は悪くはならない」と言い切る。トヨタは08年のグループ販売台数計画を5%増の985万台とする。中国の43%増、中南米の11%増、中近東の6%増などが牽引する。

自動車販売市場推移
 市場全体として見ても08年はBRICs4カ国の自動車販売台数が初めて世界最大の市場=米国を超える。
 

モータリゼーションが本格化し、一段の伸びが期待できる。しかも中国やロシアでは中・大型車が支持される。中近東でも砂漠の走行に最適なオフロード車が大ヒット。「これらは1台当たりの利益も大きい」と、あるトヨタ幹部は話す。

市場縮小が必至の米国でも、日系メーカーの販売台数は横ばいもしくは微増となる見込みだ。ガソリン高騰で低燃費の日本車人気が続き、各社とも小型車やハイブリッド車が好調でシェア拡大が続くからだ。 

国内工場の生産革新も進み、「円高抵抗力」はかつてないほどに強まっている。「09年度の為替水準が08年度と同水準で推移すれば、日系自動車メーカーは09年度に再び最高益に返り咲く可能性が高い」(日興シティグループ証券の松島憲之マネジング・ディレクター)。
 

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