ニッポン大企業の内憂外患
デジカメが急失速 薄型テレビへも波及か
自動車と異なり新興国向けのウエートが低く米国依存度の高い家電業界は、米景気減速の影響が直撃する。売上高の4分の1を米国で稼ぐソニーは07年度第3四半期(10~12月期)を過去最高の決算で終えた。だが、「第4四半期(1~3月)から米国景気減速の影響がじわじわ出てくるだろう」。大根田伸行CFOは決算説明会の席で不安を口にした。特にソニーにとって家電でいちばんの稼ぎ頭である「デジタルカメラはその影響を受けやすい」(大根田CFO)。
実際、過去数年、高成長を遂げてきたデジカメだが、昨年末商戦で消費が急減速した。そのあおりをモロに受けたのがオリンパスだ。07年度業績を2度にわたって上方修正してきたが、第3四半期ではコンパクトデジカメの販売が計画を50万台も下回る308万台へ失速。一転して業績下方修正を余儀なくされた。「サブプライムの影響がここまで出るとは思わなかった」と川又洋伸経理部長は肩を落とす。
コンパクトデジカメ世界最大手のキヤノンも、07年の年間出荷実績は10月発表の計画を40万台下回った。理由は「欧米で年末商戦が思ったほど盛り上がらなかった」(大澤正宏常務)ため。そのほか、富士フイルムやカシオ計算機、ペンタックスなども北米の年末商戦では、軒並み計画割れになったとみられている。
カメラ映像機器工業会(CIPA)が1月末に発表した08年の北米向けデジタルカメラの出荷見通しは9・7%増の3592万台。保守的に出す傾向があるとはいえ07年の32・1%の伸びから急激に鈍化する。業界2位のソニーが「(景気の減速によって)07年度の出荷計画2200万台を達成するには価格を落とさざるをえない」と語るなど、価格競争の加速で収益性の悪化も懸念される。
さらに家電メーカーにとって最悪のシナリオは、景気減速の影響が、主力商品である薄型テレビに波及することだ。主戦場の米国の薄型テレビ需要に急ブレーキがかかれば、メーカー各社の08年度業績は一気に減益になってしまう。日本国内も建築基準法改正の影響でマンション完成戸数が急減する「08年夏ごろからテレビなど耐久財需要の減少が顕在化するだろう」(日本総合研究所の枩村(まつむら)秀樹主任研究員)との懸念がある。
「正直、08年度はどうなるのかまったく読めない」(大手家電メーカー幹部)というのが各社の本音。その理由の一つが8月に開催される北京オリンピック。世界的な景気減速を不安視する一方、6~7月ごろから国内をはじめとしたオリンピック特需で盛り返してくる、という楽観的な見方もある。メーカーからすれば、景気減速を懸念して生産を抑えたためにオリンピック商戦で商品が足りずシェアを落としてしまうことは避けたい。逆にオリンピック特需を当て込んで増産したものの、需要が盛り上がらず過剰在庫を抱えてしまうリスクもある。伸びは鈍化するものの増益は確保するというのが家電業界全体の08年度見通し。市場成長が鈍る中、商品力によるメーカー間格差は一段と広がる。