コロナ失職「サービス業従事者」転職が難しい訳 これからは人材と求人のミスマッチが拡大する
ロブ・シミノスキさん(33)は大学を卒業してからずっと、何らかの形で劇場の仕事に携わってきた。しかし、カリフォルニア州にあるユニバーサル・スタジオのテーマパークで10年の勤務経験を積んだ今も、ステージ監督者名簿のランクは「13番」どまり。つまり、3月から閉園しているテーマパークで、仮に「ウォーターワールド」のスタントショーやホグワーツ城のライトアップショーといったアトラクションが再開されたとしても、シミノスキさんに最初にお呼びがかかることはまずない。
ラッキーだったのは、所属労働組合の国際電気工友愛組合(IBEW)が、映画撮影現場の電気技師となる実習プログラムを提供していたことだ。実習完了には5年かかるが、シミノスキさんは高校時代に習った代数を復習し、このプログラムを受けるつもりでいる。努力に見合うだけの見返りがあるからだ。
「電気技師はどこでも引っぱりだこだ。稼ぎもかなりいい」とシミノスキさんは言う。
最もきついのはサービス業の低賃金労働者
アメリカ経済のコロナ禍からの回復はあるレベルまで、シミノスキさんのように劇場関連の仕事をしている人が、いかに早く電気技師に転身できるかにかかっている。タクシー運転手が配管工になれるのかどうか、あるいは、どれだけ多くの調理師が銀行のソフトウェア管理を行えるようになるかにかかっていると言ってもいい。
アメリカの労働市場は2〜4月に失われた2200万人の雇用のうち1200万人ぶんを取り戻した。だが、たとえワクチンの接種が始まったとしても、失われた仕事の多くがすぐに戻ることはないだろう。
これが特に問題となるのは、小売りや接客、建物の維持管理、運輸・交通といったサービス業で働く何百万人もの低賃金労働者だ。というのは、こうした職種では雇用が永遠に元の水準に戻らなかったり、職種そのもののあり方が根本から変わったりする可能性があるからだ。例えば、オフィスで働く人が減ったら、清掃などの雑務をこなす人々の仕事はどれだけ残るだろう。レストラン全体の客足が以前のレベルに戻らなかったとしたら、ウェイターの仕事はどうなるのか。
先行きは暗い。ブルッキングス研究所のエコノミスト、マルセラ・エスコバリ氏は、新型コロナウイルスのリスクが後退し、雇用の回復が進んだとしても、「(コロナ不況で)最も痛手を負った人々の助けにはならない」と警告する。