コロナ失職「サービス業従事者」転職が難しい訳 これからは人材と求人のミスマッチが拡大する

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政策担当者は長年にわたって職業訓練の問題に頭を悩ませてきたが、人材と求人のマッチングは今回のコロナ禍によって、さらに難しくなった。石油・ガス産業向けに機器を販売する仕事に就いていたオースティン・ユーリックさん(31)は昨年に失業してから、学校に入り直した。ヒューストン近郊のサンジャシント・カレッジで計装と電気システムを学ぶことにしたのだ。ユーリックさんは石油・ガス企業で使われる計器やポンプを検査したり、交換したりする資格を得て、今月卒業する予定になっている。

ところが、パンデミックの影響は石油・ガス業界にも広がっている。ユーリックさんはこの業界で就職先を見つけるのにかなり有利な立場にあるにもかかわらず、働き口はまだ見つかっていない。ユーリックさんは「不安だ」と話すが、「石油・ガス業界がダメなら、ほかの選択肢もある」という。取得した資格はつぶしが利く、ということだ。

「エレベーター会社だろうが病院だろうが、計器のある場所ならどこだって働ける。バドワイザーの醸造所で働く手もある」とユーリックさん。

デジタル化で職種転換は一段と難しくなる

ヒューストンを擁するハリス郡では今年初めから9月にかけて約16万の雇用が失われた。同郡は連邦議会が承認したコロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES法)による緊急資金を用いてコミュニティカレッジや非営利団体と職業訓練プログラムを共同開発。コロナ禍で失業した3000人の労働者を、配管や会計、看護やプログラミングといった、より求人の多い職種に移行させる取り組みを進めている。

「職業訓練は私が郡の仕事に携わるようになったときから最優先課題の1つだった」。ハリス郡の中でも経済的に特に貧しい地域で郡政委員を務めているエイドリアン・ガルシア氏はこう語る。「そして今回のパンデミックで、課題は死活問題となった」。

職業訓練プログラムの定員が埋まる中、ガルシア氏は郡がプログラム拡張の財源を捻出してくれることを期待している。ただ、職業訓練の規模を拡大できたとしても、職種転換は極めてハードルが高い。コロナ後のニューエコノミーでは、従来の職種の多くが消失し、高度なデジタルツールを使いこなせる人材が必要とされる場面が多くなるからである。

「スキルのニューディール政策が必要だ」と話すのは、人々を雇用した上でデジタルスキルの研修を施し、就職支援を行うレヴァチュアーのアーミット・セヴァク社長だ。「ルーズベルト大統領は大恐慌のとき、大量の労働者をさまざまな公共事業で雇用して現在使われているダムや道路や橋を生み出した。私たちにも、このような政策が必要だ」。

(執筆:Eduardo Porter記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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