現代の不平等と政治が「階級」なしに語れない訳 私たちが英国「7つの階級」調査に着手した理由

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こんにちのイギリス社会では、長く続いてきた中流階級と労働者階級の区別とはまったく別の、新しい階級の秩序が根本から再形成されつつある。新たな社会階級では、最も上の階級と底辺の階級のヒエラルキーの差異はこれまで以上に鮮明だが、その中間にある各層の違いは極めて曖昧で複雑だ。

本書では、最上位の階級を「富裕なエリート」、日々の暮らしに困窮する底辺の階級にある人々を「プレカリアート(precariat)」と呼ぶことにする[プレカリアートは、不安定や危うさを意味する「プレケリアス(precarious)」と、無産階級を意味する「プロレタリアート(proletariat)」を合成した造語である]。

従来の社会階級調査との違い

本書で明らかにしたいのは、3つの異なる種類の資本の集中が、さまざまな社会階級を形成している事実だ。3つの資本とは、経済資本(資産と所得)、文化資本(嗜好、興味、文化活動)、社会関係資本(社会的ネットワーク、友人関係、参加する集団)である。これらについては本書の各章でそれぞれ詳しく論じる。

この3つの資本の蓄積の違いにより各階級が形成されていることがわかれば、上下間で拡大しつつある経済格差が階級格差とどのように関連しているのか理解できるはずである。また、階級を、工場労働者や炭鉱労働者、農場労働者など昔の工業時代の肉体労働者(ブルーカラー)と、工場主や専門的職業(プロフェッショナル)、経営者(マネジャー)などと対比した、過去の遺物の復活とする見方をかわすこともできる。

従来の社会学的分析は職業によって人々を分類していたため、階級の文化的、政治的特徴を十分には明らかにできていなかった。本書は、経済資本、文化資本、社会関係資本に着目することで、従来の方法に代わる新しい社会学的分析の方法を提示したい。

ジャーナリストのオーウェン・ジョーンズや社会地理学者のダニー・ドーリングといった近年の批評家たちが、階級という概念に言及することはほとんどない。他方、エコノミストたちは熱心に格差の拡大を強調してきたが、格差を社会階級の概念で説明することはしない。

彼らは、こんにちの経済的分断を階級で説明するのは粗っぽい議論だと考えているのだろうか。そうした傾向に対し、本書は階級の重要性をもう一度呼び覚ましたい。

経済資本、文化資本、社会関係資本の集中が新しい階級を形成しているとする私たちの視点は、拡大する経済格差と、より幅広い意味での階級の分断の関連を明らかにするだろう。

また、こんにちの深刻な社会的断絶、特に最上層と最下層の断絶の実像を明確にし、別の階層から最も優位性のある地位に移動することの困難や、かつてなく深刻化した地域的分断、エリート大学の権勢の理由を理解する一助にもなると思われる。

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