超名門大MITが音楽を学ぶ絶好の場と言える訳 創造的な問題解決には人文学やアートが不可欠
1976年に、ボストンというロック・バンドがデビューして成功を収めた。その先進的なサウンドには中学生だった当時の私も魅了されたが、ひとつだけ気になることがあった。
「マサチューセッツ工科大学(MIT)在学中に独学でギターをマスターした」という、リーダーのトム・ショルツに関するプロフィールである。
大学卒業後、ポラロイド社に就職してプロダクト・エンジニアになった彼は、仕事と並行しながら自宅につくったスタジオでデモ・テープを収録。その完成度が認められ、デビューが実現したというのである。
たしかに、作品に非の打ちどころがなかったのは事実だ。しかし思春期の真っ只中で屈折しまくっていた私は、「マサチューセッツ工科大学の学生と音楽との接点が見当たらない」と感じていたのである。
が、それが大きな勘違いだったということを、『MIT マサチューセッツ工科大学 音楽の授業 ~世界最高峰の「創造する力」の伸ばし方』(菅野恵理子 著、あさ出版)を読んで、いまさらながらに実感した。
創造的な問題解決のためにアートの経験が役立つ
マサチューセッツ工科大学(以下MIT)は、音楽を学ぶには絶好の環境だということが理解できたからだ。
もちろん工科大学なので、当然のごとく科学・テクノロジー・工学・数学、いわゆるSTEM(Science、 Technology、 Engineering、and Mathematics)が重視されてはいる。しかしその一方、同学では人文学や芸術科目にも力を入れているというのである。
中でも、音楽科目は人気が高い。
MITが人文学に力を入れることについて、音楽学科長・作曲家のキーリル・マカン氏は「エンジニアたちは、創造的な問題解決法を編み出すために、人文学やアートの経験が役立つことに気づいている」と述べている。「テクノロジーや科学技術の発達に伴う問題の多くは、人間性理解の欠如から来ている」とも。
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