料理をやめた途端「認知症リスク」が急増する訳 「惣菜をパックのまま食卓に出す人」は要注意
前回紹介した認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害のことを示す)の人は、「めんどうくさい」とは直接言わず、もっともらしいエクスキューズ(言い訳)を言うようになるのも特徴です。
たとえば、カラオケが大好きで近所の仲間も集まるカラオケ喫茶に通っていたのに、突然行かなくなってしまった。「どうしてやめてしまったの?」と家族が聞くと、正座がつらい、腰が痛い、早起きがつらい、カラオケ仲間に嫌な人がいるなど、適当なことを言ってごまかします。本当はただめんどうくさいだけなのに、やらないことに何らかの理由をつけて正当化しようとするのです。
やらなければいけないことを先延ばしにするときも同じです。「明日は銀行へ行って手続きをする」と言っていたご主人が、翌日になってもなかなか出かけないので、「早く行ったほうがいいですよ」と奥さんが声をかけると、「雨が降りそうだから、今日はやめた」などと言ってやめてしまう。
おそらく、心の中では続けないといけない、サボっちゃいけないという気持ちが、まだどこかに残っていて、やめることに後ろめたさを感じるために言い訳をするのではないかと考えられます。無気力を人に悟られたくないという気持ちもあるかもしれません。完全に認知症になると、そうした気持ちも残りにくくなります。これも認知症グレーゾーンの特徴と言えるでしょう。
「めんどうくさい」と「認知症」の関係
では、なぜ認知症グレーゾーンの人は、「めんどうくさい」と感じるようになるのでしょうか。認知症になると、脳の側頭葉で記憶を司っている“海馬”と呼ばれる部分が萎縮することは一般に広く知られています。
加えて、実は海馬の萎縮が始まるより先に、前頭葉の機能が落ちてくるケースがよくあります。前頭葉はちょうどおでこのあたりに位置し、言ってみれば「脳の司令部」。やる気を生み出す中枢でもあります。本来は旗振り役のこの部分の機能が衰えることにより、「うーん、めんどうくさいな、まだやらなくてもいいかな」「行かなくてもいいかな、今度でいいかな」となってしまうと考えられます。
さらに言えば、認知症グレーゾーンの初期の頃に見られる「人の名前を思い出せない」などの記憶力の低下も、前頭葉の働きが落ちていることに由来するのではないかと、私は考えています。
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