料理をやめた途端「認知症リスク」が急増する訳 「惣菜をパックのまま食卓に出す人」は要注意

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料理というのは非常に煩雑な作業で、献立を考えるところから始まって、食材を揃え、同時進行で煮たり焼いたり炒めたり刻んだりしながら、すべての料理をちょうど美味しいタイミングで食卓に並べなければなりません。2ステップどころかマルチステップが求められます。集中力と注意力をフル稼働する必要があるので、前頭葉の働きが低下している認知症グレーゾーンの人にはうまく対応できません。

そのうち、今夜のおかずを何にするかも考えつかなくなり、料理を作ることを避けるようになります。認知症グレーゾーンの人が料理を作れなくなる背景には、記憶力の低下とともに、「めんどうくさい」という意欲の低下も大きく影響していると考えられます。

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以前は、今日はこんな料理に挑戦してみようとか、家族にこんな料理を食べさせてあげたいといった思いで毎日料理を作っていたのに、そうしたモチベーションがまったく湧いてこなくなります。加えて何十年も作ってきた料理の手順の記憶も落ちますから、料理を作ろうという気持ちにならないのです。

それでも、自分の役割として料理を作らなければいけないと思っているため、献立がワンパターンになっていきます。さらに症状が進むと、スーパーやコンビニエンスストアで出来合いの惣菜を買い、それで済ませることが増えていきます。最近は小さいパックの惣菜が、種類も豊富に店頭に並んでいます。

料理は「認知症対策」にとても有効

一人暮らしや夫婦二人暮らしの家庭では、作る手間や材料費を考えると、「自炊するより経済的」と言われれば確かにそうだと思います。しかし、実はそれが認知症グレーゾーンによる「めんどうくさい」の言い訳である可能性も考えておく必要があります。惣菜の中身がポテトサラダやきんぴらごぼうなど、バランスの取れたものを選んで買っているうちは、まだある程度の気力が残っています。

一方で、毎日おにぎりや即席ラーメンだけで済ませていたり、買ってきた惣菜を皿に盛ることもせずにパックのまま食卓に出すようになってきたら、認知症にかなり近づいてきていると考えたほうがいいでしょう。本来、料理を作ることは認知症対策にとても有効です。それをやめてしまうと認知症がより進みやすくなるところも問題です。

朝田 隆 メモリークリニックお茶の水理事長・院長

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あさだ たかし / Takashi Asada

認知症の早期発見・早期治療に特化した「メモリークリニックお茶の水」理事長・院長。東京医科歯科大学特任教授。筑波大学名誉教授。医学博士。1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。40年以上にわたり、2万人を超える認知症、および、その予備群である軽度認知障害(MCI=グレーゾーン)の治療に従事。認知症予防&治療の第一人者として診察にあたる傍ら、テレビや新聞、雑誌などで認知症の理解や予防への啓発活動を続けている。

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