勝利だけにあらず。これがドイツの秘密 第6回 半世紀前から広がったスポーツの幅

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スポーツ広い価値をほりおこせ

ひるがえって日本を見ると、学校スポーツだけではなく、一般でも「スポーツ=勝利」の考えかたが強い。その結果、ゲートボールで高齢者が喧嘩をしたり、皇居のジョギングでさえタイムの追求をするランナーがいて、問題となっているとも聞く。リトルリーグのしごきで死者が出るといった痛ましい事件もおこる。

 それでも「楽しみ」「健康」を目的にした幅の広いスポーツの必要性はでてきている。昨今の体罰マネジメントに対する告発や批判も、見方を変えれば社会の変化が起こしたアレルギー反応ともいえまいか。

 また中学校や高校の部活も、勝利至上主義のガチガチの体育会系ばかりではない。「ゆるい体育会系の部活」にいる生徒の中には、なんとなく「引け目」を感じている人もいるようだが、それでも友人とスポーツをする楽しさや、楽しみとして試合に出る体験しているはずだ。成人になってからもそういうスポーツが継続できる社会環境が整備されると、生活の一部としてスポーツを楽しむ層がもっと増えるだろう。

 今の日本、時代の要請を見ながら、スポーツがもつ幅広い価値にもっと着目し、具体的な実現を考えるべきだろう。それによって、「試合で勝ってナンボ」といった狭量なスポーツ像は小さくなり、「スポーツにはいじめ・体罰が伴う」というのとは逆のイメージができてくる可能性がある。

高松 平藏 ドイツ在住ジャーナリスト

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たかまつ へいぞう / Heizou Takamatsu

ドイツの地方都市エアランゲン市(バイエルン州)在住のジャーナリスト。同市および周辺地域で定点観測的な取材を行い、日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。著書に『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか―質を高めるメカニズム』(2016年)『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか―小さな街の輝くクオリティ』(2008年ともに学芸出版社)、『エコライフ―ドイツと日本どう違う』(2003年化学同人)がある。また大阪に拠点を置くNPO「recip(レシップ/地域文化に関する情報とプロジェクト)」の運営にも関わっているほか、日本の大学や自治体などで講演活動も行っている。

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