「酒場店主」が行きついたジンワリ癒すお燗の技 プロに学ぶオンとオフをつなぐお酒のたしなみ
向かったのは、四谷・荒木町。小体の良店が集うこのエリアでは数年前から日本酒のイベントが行われ、日本酒好きをときめかせる町と化している。
なかでも1986年生まれの2人、お燗番で店主の佐藤正規さんと料理を担当する北村徳康さんが開いた「荒木町 きんつぎ」は、2018年7月の開店以来、きらきらと輝き続けている。舌を悦ばせる料理と、心まで温めてくれるお燗で、連夜訪れたお客を幸せの彼方へ導いてくれるのだ。
大学卒業後から、お燗をつけて12年
佐藤さんは大学卒業後、勤め先の焼鳥屋、神奈川・溝の口「遊家(ゆうや)」で地酒に触れ、日本酒が好きになった。さらに日本酒の理解を深めるべく、仕入れ先の酒販店「坂戸屋」で働くようになる。
「“燗職人”と呼ばれる先輩や、勉強に赴いた蔵の方から、その銘柄に適したお燗のつけ方を教えてもらい、それをまねて実践を重ねていきました。坂戸屋で扱う日本酒は、食中酒のなかでもとくにお燗にしておいしくなるお酒を多く扱っていたのです」
さらに、東京・学芸大学「件(くだん)」で料理とお燗の技を磨き、独立を果たした。社会に出て以来、佐藤さんの生活はずっとお燗とともにある。
ある日のおまかせの料理とお燗の一部はこんな感じだ。席に着くと、まず温かいだしが供される。肩の力がすーっと抜け、自然とリラックス。この時点で胃袋も心も摑まれる。
前菜の後に登場したのは、真鱈の白子焼。その下には白菜のすりながしが敷いてある。合わせるのは、“丹澤山 麗峰(れいほう)”。1年以上タンクで寝かせることで丸みを帯びた円熟味を生み、お燗でさらに映える酒質をめざした銘柄である。
「だしの旨味を感じられる優しい味わいの料理なので、2回火入れをした落ち着いたタイプのお酒を合わせました。おだやかでいて、芯のある旨味も感じられるお酒です」
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