一見おっかない「ドヤ街の管理人」の凄い人情味

日本3大ドヤ街「横浜・寿町」の人間模様

日本3大ドヤの1つ「寿町」。「日本の最後の砦」を守る帳場さんの仕事とは?(写真:筆者提供)
東京の山谷、大阪の西成と並び称される「日本3大ドヤ」の1つ「寿町」。伊勢佐木町の隣町であり、寿町の向こう隣には、横浜中華街や横浜スタジアム、横浜元町がある。横浜の一等地だ。
その寿町を6年にわたって取材し、全貌を明らかにしたノンフィクション、『寿町のひとびと』がこのほど上梓された。著者は『東京タクシードライバー』(新潮ドキュメント賞候補作)を描いた山田清機氏。寿町の住人、寿町で働く人、寿町の支援者らの人生を見つめた14話のうち、「第六話帳場さん二題」から一部を抜粋・再構成して紹介する。

寿地区の入り口には、結界に相応しい人物が睨みを利かせている。扇荘新館の帳場さん、岡本相大である。

扇荘新館は松影町2丁目交差点の北西の角にあり、石川町駅から寿町を目指して歩いてきた人間が最初に目にするドヤである。ドヤと言っても外観はビジネスホテル並みに美しく、エレベーター完備のバリアフリー構造になっている。

玄関の右手に小窓が開いていて、その小窓の奥に岡本がいる。寿町を目指してやってきたはいいがどうしたらいいかわからない人の多くが、とりあえずこの小窓の奥にいる岡本に声をかけることになる。

岡本の見た目は、少々おっかない。小窓から見える上体はがっちりしている。短く刈ったごま塩頭に銀縁のメガネをかけていて、声を掛けても笑わない。返事もツレない。

私は岡本から寿町に関する情報をいろいろと貰っており、いつか岡本本人を取材せねばと思っていたのだが、対面すると臆してしまっていた。だが、虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。思い切って小窓に向かい、

「岡本さんご自身を取材させてください」

と申し込んだ。

盗癖

取材当日、小窓から岡本に声を掛けると、小窓の横の鉄の扉をガチャリと開けてくれた。午前10時である。

ドヤの管理人は一般的に「帳場さん」と呼ばれている。ドヤは法律的には宿泊施設だから、帳場さんはホテルで言えばフロントマンに当たる。しかし、ドヤにはいろいろな人がいるから、管理人室には厳重に鍵が掛けられており、窓も小さく作ってあるのだ。外から手は突っ込めても、体を潜り込ませることはできない。

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