一見おっかない「ドヤ街の管理人」の凄い人情味 日本3大ドヤ街「横浜・寿町」の人間模様

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管理人室は細長い形をしていて、ドヤの入り口から建物の奥の方に向かって伸びている。一番奥にはベッドがある。岡本が陣取っているのは、小窓のある一番手前(入り口側)である。

岡本の左手にはドヤの各階の様子を映し出している大きなモニターがあり、右手には入り口周辺の様子を映しているモニターがある。この2つのモニターさえ見ていれば、離席することなく扇荘新館の内外を監視できる仕掛けだ。

若い住人のほとんどは〝精神の人〞

ちなみに扇荘新館は199室あり、約190人が泊まっている。住人の大半は高齢の単身男性で、若い住人のほとんどは〝精神の人〞だという。要するに、精神疾患を抱えている人という意味である。

岡本が小さなテーブルと椅子を用意してくれたので、いざインタビューを始めようとすると、小窓に五十絡みの男性が現れた。吃音が強く言葉を聞き取りにくい。

「か、か、乾燥剤を……。帳場さん、あ、あ、雨だから布団干せないすね」

「だから、まずは布団を畳んで、あいたところを掃除だよね。あと臭いは?」

「に、臭いはないです」

「芳香剤は?」

「芳香剤はちゃんと、や、やって、やって、大丈夫です」

「芳香剤はまだあるの?」

「あー、まだ、だめ、あー、あのー」

「あーあーじゃなくてさ、芳香剤はあるんですか、ないんですか?こうして(斜めにして)見れば液体があるかないかわかるでしょう。見てないの?」

「はい。あー、あの、ちょっ、ある、ちょっと」

「あるんですか、ないんですか?」

「いや。あー、ありました、ありました」

やがて話題は、男性が使ったオムツと昨日食べた弁当の空箱の処理のことになり、岡本がゆっくりとした口調で懇切丁寧に汚物と弁当箱の捨て方を指導すると、男性は納得した様子で部屋に戻っていった。

この男性はオムツも弁当箱もゴミ箱に捨てずに部屋の中に放置してしまうため、部屋が臭いと何度も言いにくるそうだ。岡本はその都度片付け方を教えるのだが、何度教えても忘れてしまう。

乾燥剤の男性が立ち去ると、今度は少し若い男性が小窓に顔を出した。まだ40代だという。

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