なくならない「夜逃げ」背景にあるそれぞれの事情 ある日消えて連絡が取れなくなってしまう
神奈川県座間市に全国でも数少ない、一般には敬遠されがちな高齢者、母子家庭、障がい者などといった住宅困窮者を受け入れ、部屋探しに尽力しているプライムという不動産会社がある。その経営者である石塚惠氏がつぶやいた一言が気になっていた。
「夜逃げが3件続きました。全員、男性です」
必ずしも夜中に逃げるわけではないものの、借金や家賃が払えなくなり、行き先を告げずにこっそり逃げることを夜逃げという。夜逃げに関する統計、研究などはなく、正確にはわからないが、家賃滞納が100件あったとして夜逃げに発展するのは1件あるかないか。それほど起こるものではない。それが2年弱に3件の発生は非常に多い。
さらにひっかかったのは「男性」という部分。全員男性というのは偶然だろうか。それとも、男性が夜逃げに追い込まれやすい事情があるのか。背景を探るため、賃貸トラブルに詳しい専門家、そして石塚氏に聞いてみることにした。
男女で異なる夜逃げの背景
まず、訪れたのはこれまでの20年間で夜逃げも含め、約2600件もの家賃滞納トラブルに対処してきたOAG司法書士法人代表の太田垣章子氏。家賃滞納トラブルに関してはプロ中のプロである。「夜逃げは男性に多いのか」という質問に対して返ってきた答えは「9割以上が男性です」だった。
太田垣氏によると、全体を100とした場合、女性の夜逃げは多くて2くらい。失業による困窮、借金、家賃滞納など経済的な要因で消えることが多い男性に比べると、女性は女性特有の要因で姿を消すことが多い。
主な夜逃げの要因は2つあると太田垣氏。1つはストーカーに追われて、あるいはドメスティック・バイオレンス(DV)から逃げるため、もう1つは男性の家に同居した後、前住居を放置することによるものだ。
ただし、それ以外の場合、夜逃げに至ることは少ないようだ。女性の場合は家賃滞納に陥ることがあっても、友人宅や親しい男性宅に身を寄せるなど、誰かに頼るという選択肢を取れる人が多いのかもしれない。「女性のほうが社会とつながりがあり、金銭的な計算ができていることが多いようです」と太田垣氏は指摘する。
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