なくならない「夜逃げ」背景にあるそれぞれの事情 ある日消えて連絡が取れなくなってしまう

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「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」

2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。

一時はボランティアの手伝いもしていたが

1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。

その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 

2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。

ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。

3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。

太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。

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