フォルクスワーゲンの「EV大転換」が危うい理由 ユーザー不在のクルマ作りが招く最悪の事態
フォルクスワーゲン車に初めて違和感を覚えたのは、昨年行われたゴルフ8(8代目ゴルフ)の海外試乗会だった。
例えば、今までのゴルフなら、起毛の内張りが施されていたグローブボックスがプラスチックむき出しとなっていたり、フロアコンソールのドリンクホルダーの蓋がなくなっていたり、内装で気になる部分が目についた。
また、ボンネットを開けたときの支えもダンパー式からただの細い棒に変更されているなど、細部へのこだわりの明らかなる低下が感じられたのだ。
そこでフォルクスワーゲンのコストダウンの始まりを薄っすらと感じたのだが、それでもゴルフ8はまだ許容範囲といったレベルでの低下に収められていた。しかし、その後に試乗した「T-ROC」は、さらなるコストダウンが図られていた。
それまでソフト素材が使用されていたインパネなどに、叩くとコンコンと音が鳴るようなハードプラスチックが使われており、コストダウンの方針が目に見えるレベルで感じられたのだ。
この急激な製品理念の方向転換は、「何かあった」と思わざるをえないレベルである。
ことの発端は2015年の「あの事件」
「フォルクスワーゲンらしさ」を決めるトップの人たちの間で、クルマづくりの価値観が大きく変わっている。そうでなければ、ここまで急激に変わることはありえない。
もちろん、コストダウンは企業としては不可欠で、どこのメーカーもやってはいる。しかし、ユーザーが一見してわかるようなコストダウンは、頭も技術も使わないコストダウンである。本来なら、コストダウンした事実をいかにユーザーに気づかせないかが重要なはずなのに……。
今までのクオリティーを維持するどころか、その水準をさらに上げつつ、技術などの努力でコストを下げていくことが、本当のコストダウンのあり方ではないだろうか。
フォルクスワーゲンのコストダウンをめぐる急な方向転換の大きな要因として、ディーゼルゲート事件が考えられる。フォルクスワーゲンが、ディーゼルエンジンの排ガス測定不正により、本来販売してはいけないクルマを販売していた、2015年の大スキャンダルだ。
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