フォルクスワーゲンの「EV大転換」が危うい理由

ユーザー不在のクルマ作りが招く最悪の事態

現在、「もっといいクルマづくり」を実践しているトヨタですら、リーマンショック後のクルマは、クオリティーが著しく落ちた。それを変えたのはやはり経営陣で、現社長である豊田章男氏が「もっといいクルマを作ろう」と言い出したことにほかならない。

そこから10年弱という期間をかけて、どんどんクルマをよくしていったのだ。そう考えると、企業にとって、特にBtoCでビジネスをしている自動車メーカーにとって、トップの価値観はかなり重要となる。

2021年3月期 第2四半期決算説明会で会見を行う豊田章男氏(写真・トヨタ自動車)

日産も、元CEOのカルロス・ゴーン氏によって、アセットを使って株価や利益を上げる方向へと行ってしまったがために現状の苦しさがある。プロダクトをキチンと見て、長期的な投資をする人材がトップに立っていれば、今のような状況にはならなかっただろう。

自動車メーカーにとってのトップとは、重要な存在なのだ。

「この部品を半分のコストにしよう」というような目先のコストダウンは、最初はユーザーに気付かれることもなく、短期的な収益増加にはつながるが、それは商品を傷めてのコストダウンとなるため、長続きすることはない。

自動車メーカーに限らず、BtoCを行う企業が忘れてはいけないのは、利益が“ユーザーが支払った購入代金によって成り立っている事実”だ。

それを忘れてしまうと、商品を傷めてのコストダウンやモデルチェンジ時期の引き延ばしなどを行うようになり、結果的にユーザー離れを引き起こしてしまう。そうなれば当然、経営は破綻する。

EV一本化へ突き進む危うさ

モーターショーや決算発表会などでの社長スピーチで、数字のことしか言わなくなった企業のほとんどは、業績低迷の道を辿っている。言い換えれば、トップが自分たちのプロダクトに対する想いや目標を語る企業は、成長を遂げるのだ。

そういった意味で現在のフォルクスワーゲンは、パワートレインのEVシフトへ、両手を上げて万歳突撃をしているように感じられる。

「2025年までに年間150万台のEVを販売する」という宣言を出しているが、それはユーザーにとってリアリティーのあるものではない。「そんなに一気にEVを出すんだ。すごいな。自分は買わないけど……」というように、簡単に覆されてしまうものではないだろうか。

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