フォルクスワーゲンの「EV大転換」が危うい理由 ユーザー不在のクルマ作りが招く最悪の事態

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フォルクスワーゲンのモノ作りへの姿勢は、歴史を振り返ってみても明確だ。

例えば1974年に誕生した初代「ゴルフ」は、大衆車としては考えられないレベルの高い走行性能を持っていた。自動車評論家の故・徳大寺有恒氏は、この初代ゴルフがあまりにも衝撃的で、このクルマに乗ったことをきっかけに執筆活動を始めたほどだ。

初代ゴルフに追加された高性能版の「GTI」も、衝撃的なクルマだった。

初代ゴルフGTIは元祖ホットハッチとも言われる(写真:フォルクスワーゲン)

フォルクスワーゲンは、それまでポルシェやBMW、メルセデス・ベンツなどの高級車にしか与えられなかった、速度無制限のアウトバーンの追い越し車線を走れるパフォーマンスを、大衆車ベースのクルマに与えるという革命を起こしたのだ。

1991年に3代目ゴルフが登場した時も、その内装の質感に多くのユーザーが驚きを隠せなかった。高級な素材を使い、プレミアムブランドのようなインテリアを大衆車の世界に持ち込んだためだ。

こういった歴史的観点からも、フォルクスワーゲンはプレミアムブランドにしかありえなかった性能や品質を、普通の人が普通に買える値段のクルマで実現してきたメーカーなのだ。

ゴルフに限らず、フォルクスワーゲンがラインナップするクルマは、いつの時代もシートに座ると背筋が伸び、ステアリングを握るとその質感に感動し、ステアリングの滑らかさや走りのよさを感じられ、ほかとは一線を画すいい乗り味がつねにあった。

トヨタとは異なる「大衆車」への哲学

トヨタ「カローラ」は、1966年に登場したゴルフと同クラスの大衆車だが、代を重ねるごとにその品質の差は大きく開き、先代のカローラ(11代目)と現行のゴルフ(7代目)の格差はかなりのものとなっていた。その差こそが、「大衆車」に対する哲学の違いだ。

しかし、トヨタは「もっといいクルマづくり」を標榜する豊田章男氏が社長になってから、その差は再び縮まり、逆転もありうる状況となってきた。

問題なのは、差が縮まってきた理由だ。トヨタ車がよくなっているのはもちろんだが、トヨタのがんばりだけが理由ではない。昨今のフォルクスワーゲン車に、明らかなる品質の低下が見られるのだ。

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