算数も怪しい人が知りたかった分数計算の真髄

わが子に真似させたくない「暗記(だけ)数学」

ここで次の問題を考えていただきたい。

問題 牛乳が13/3リットルある。それを2/7リットル入りのコップいっぱいに次々と入れていく。すると、何杯のコップがいっぱいになって、最後に何リットルが余るだろうか。

この問題に関しては、大多数の人たちは恐らく次のように計算するだろう。

13/3÷2/7=91/6=15と1/6(帯分数)

そこで、まず15杯のコップがいっぱいになることがわかる。問題の核心は余りであるが、「余り1/6リットル」は誤答であり、正答は「余り1/21リットル」である。

解説すると、2/7リットルの1/6が余りとなるので、

2/7×1/6=1/21

と計算するのである。

この説明がわかりにくいと思う読者は、次のように考えてもよいだろう。

7÷3=2余り1

における余りは、

7-3×2=1

と計算することを思い出す。上の問題の余りは、

13/3-(2/7)×15=91/21 - 90/21=1/21

となるのである。

ちなみに拙著『AI時代に生きる数学力の鍛え方』では、余りのある「小数÷小数」の計算でこの種の問題を説明してあるが、割り算の「余り」をよく理解していないと、上で紹介したような誤答を導いてしまうことが多い。そうした誤りの原因は、計算の「やり方」だけの暗記なのである。

算数・数学の「説明がわかりやすい」の意味

算数・数学は、考える力を鍛えるために欠かせない学びである。しかし、そうした学びを大きく妨げるものが、多くの教育現場にはびこる「暗記(だけの)数学」である。

その意味は、数学の問題を解くために、プロセスを無視して「やり方」や「答え」だけ暗記して問題練習をし、それで終わりにして先へ進むことをいう。とくに「用語」の意味も知らずに問題を解くことも含まれる。

この方法で算数・数学を何年勉強しても、物事を順序立ててとらえ、論理的に考える力を養うことにはほとんどならない。要するに、考える力を育むには「暗記」ではなく「理解」を大切にする教育と学びが必要なのである。

筆者はそのことを小・中・高校の数学教員の研究集会などでたびたび訴えてきたが、あるとき、学ぶ側からの「わかりやすい」という表現に、相反する2つの意味があることに気づかされた。

それは、算数・数学の説明が「わかりやすい」という場合、「暗記しやすい」または「理解しやすい」のどちらかを意味しているということだ。

算数・数学の学びは「何でも暗記すればよい」と捉えている人たちからすると、「わかりやすい」は「暗記しやすい」なのである。彼らは本質を「理解しやすく」するための丁寧な説明を試みる指導や説明文に対して、「回りくどい説明」だとか「文章が多くてわかりにくい説明」などと安易に批判する。

もちろん、最初は暗記して、暗記したものを活用して、最後に背景にある論理を知りたくなってプロセスを理解する、という順序もまたよいのである。実際、学校や学習塾で、最初に暗記させて最後に理解させる指導を試みている教員も少なくない。

それは登山にたとえると、ガイドブックで頂上からの素晴らしい景色を見せておいてから、その背景を実際に自分の目で確かめる気持ちで一歩ずつ山に登ってもらうということである。

ところが現実には、最初に暗記だけしてプロセスを理解する学びを省略してしまう場合が多々あるのだ。分数の各種計算の公式を忘れると、とたんに珍妙な計算を始める人がいまだに少なくないことが、そのことを物語っている。主な原因は、そのような困った解答をする人にあるのではなく、そのような困った解答をする人を育てた教育にあるのではないか、と疑問の声をあげたいのである。

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