「ブルーライトメガネ」が超売れた意外な理由 行動経済学でわかる「ヒット商品」の作り方

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③検討フレームワークになっていないから

もちろん、行動経済学は、マーケティング戦略のためだけに存在しているものではないので、文句を言っても筋違いですが、「これを順に検討していけば、一通りの何かが完結する」という検討の流れになっていないので、個別の理論を1つひとつみていかなければならず、結果として検討のとっかかりをつかみにくいのです。

実務家としてのそのような考えを踏まえ、行動経済学をマーケティングに活用するために、以下のような作業を行ってみました。

・現実的に、マーケティング戦略に使えそうな理論だけ抽出する
・マーケティング施策の検討ステップと同期させ、各理論を当て込む
・各理論について、複雑な名前は排除し、直感的にわかる名称とする

その作業の結果、以下で示す「5つのカテゴリー」に、4~7つずつ行動経済学の理論をプロットし、最終的に「26の切り口」にまとめることができました。

①好感認知をつくる
②新たなニーズを創出する
③魅力的に感じさせる
④選びやすくする
⑤自然に継続してもらう

これらはすべてを網羅して検討するための「フレームワーク」ではありません。あくまでマーケティング施策アイデアを創発するための「ツール」であるという前提でご活用いただくためのものです。本稿では、マーケティング戦略で特に重要な、【②新たなニーズを創出する】というカテゴリーについて、一部をご紹介したいと思います。

ヒットの理由は「敵」を作ったから

今やすべての市場は成熟化が進んでいます。多種多様な商品/サービスがあふれかえり、生活者の欲求もかなり細かいレベルで満たされているなか、調査等を通じて、まだ手つかずのニーズを探し当てるというのは至難の業。そんな難しい時代を突破するためには、「ニーズ自体を新たに創り出す」「ニーズがあったように思わせる」アプローチが不可欠になります。

切り口例1:新たな「敵」の紹介(活用理論:損失回避性)

誰もがそう思える「新たな敵」を紹介し、認識を作った後、その敵から身を守る手段として、その商品/サービスを紹介する方法です。

非常にわかりやすい事例として、「ブルーライトカットメガネ」の戦略があります。PCなどから出る目に有害な光について、「ブルーライト」という言葉や、その危険性を世間に紹介し、社会が認めるわかりやすい「敵」に関する認識を生み出したうえで、それを防止するメガネをリリースし、普及に成功しました。

ベースにある理論は、「損失回避性」です。得をすることよりも、損をすること、リスクにさらされることについて、過大に反応してしまう傾向を指します。本アプローチについては、紹介された「新たな敵」によって、自分の何かを脅かされている状態から回避したい、という気持ちを作ることを狙うものです。

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