ホテル三日月「武漢帰国者」受け入れで得た教訓 GoTo取り込みのカギ握る「感染予防」の舞台裏

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ビュッフェも重点的に対策を講じる。会場は時間制とし、人数を制限。各テーブルは通常時より間隔を確保する。料理は小皿に小分けしたり、スタッフが取り分ける。客は紙で包装された個別のトングを使い、ビニール手袋を着用する仕組みだ。

ビュッフェは「マイトング」と「マイ手袋」で対策。部屋食のプランもそろえるが、ビュッフェの人気は根強い(記者撮影)

一方、部屋食のプランの場合、料理は重箱で提供するスタイル。スタッフはカートで配膳し、客は食事を終えたらカートを部屋の外へ出す。接触を極力減らすとともに、食事をゆっくり楽しんでもらう工夫だ。

そのほか、客室への案内を簡略化するなど業務の見直しを重ね、その対策の数々を三日月スタンダードとして外部に公表したわけだ。客にとってはホテルからの安全面の約束とも言える。今では、「しっかり対策をしているホテルだから泊まりに来ました、というお客様の声が本当に多い」(黒川氏)。

団体客の復活へ「密」防止プランも

今後は個人客の需要喚起に向け、SNSでの情報発信を強化したり、宿泊プランの増設を進める方針だ。GoToキャンペーン期間内は一定程度、個人客の宿泊需要が望める見通しだという。クリスマスなどのイベント開催や、地域の業者と連携した取り組みも模索中だ。

さまざまな観光名所のある勝浦だが、「コロナ以前と比べると観光客は激減してますね」(勝浦市観光協会)。「東京のGoToでお客さんはだいぶ増えてきたけど、去年と比べると全然ですよ」(地元の食堂)との声が聞かれた。GoTo効果があっても、勝浦の観光は本格回復には至っていない(記者撮影)

一方で、課題は大人数の社員旅行や宴会、会議利用などの団体客。本格回復には団体客の来訪が欠かせない。需要復活に向けて「密」を防ぐプランの提案など、地道な営業を重ねている。

そんな中でも、三日月スタンダードが客を呼び込む重要な土台であることは間違いない。すでに6度の刷新を経ているが、今後も政府の指針などを考慮しつつ対策を磨くつもりだ。コロナの再拡大も懸念される中では、充実したサービスやアクティビティだけでなく、十分な対策を講じ、安全性を積極的にアピールすることこそ、客に選ばれる最重要の条件と言えそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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