今回は、東京のお隣にして埼玉県の宿命のライバル・千葉県の鉄道事情について書くことになった。まあ、筆者の住んでいる東京の隣県なのだからどうということはない……と思ったが、それは大いなる勘違いであった。
よくよく思い返してみれば、筆者は千葉県の鉄道に馴染みが薄い。もちろん取材で訪れたことは何度もあるが、取材以外ではせいぜい中山競馬場に行くときか、成田空港を利用するときくらいなもの。どちらもコロナ禍のおかげですっかり縁遠くなってしまった。
“半島”ならではの特徴
千葉県民ならともかく、近隣都県在住者には筆者と似たような人が少なからずいるのではないかと思う。その理由を考えてみると、千葉県は“行き止まり”だからではないか。埼玉の場合、鉄道で東北・北陸方面に行こうとすればどうしたって通過せねばならぬ。ところが千葉県、なかでも房総半島となると、その先は大海原だから通過するという概念はない。ドーバー海峡ならいざ知らず、太平洋に鉄道トンネルは通っていないのだ。
数少ない千葉県を通過する鉄道に常磐線やつくばエクスプレスがある。常磐線はもとより千葉県ではなく茨城、そして福島へと通じる大動脈。千葉県内を通るのはごくわずかだが、その間に松戸や柏といったターミナルを持つ。いわゆる“チバラキ”のムードがむんむんと漂う一帯である。ただ、この常磐線・つくばエクスプレスルートを除けば千葉の鉄道には“通過”の概念はない。千葉の鉄道は千葉を味わい尽くすためにある、というわけだ。
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