発展は「成田」のおかげ、千葉県ご当地鉄道事情 通勤や観光に活躍、個性あふれるローカル線も

✎ 1〜 ✎ 10 ✎ 11 ✎ 12 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

このように、房総特急は房総観光と深い関係にある。ところが、最後の「さざなみ」だけは趣が違う。こちらは内房線をゆく特急なのだが、君津発着にとどまり運行パターンも平日は朝の上りと夜の下りだけ。土休日には新宿発着の「新宿さざなみ」が館山まで結んでいるものの、平日はほぼ100%“通勤ライナー”と化しているのだ。

太平洋を見ながら走る外房線「わかしお」(筆者撮影)

観光需要も置いてけぼりで、平日は通勤ライナーの内房線「さざなみ」。この悲哀の房総特急は、房総半島の鉄道事情を一変させる最強ライバルとの戦いに敗れた結果といっていい。

そのライバルとは、東京湾アクアラインだ。1997年に開通をみた、東京湾を横断する海底トンネル。計画段階では「土木のアポロ計画」などと呼ばれて無用の長物扱いもされた亡きハマコー先生肝煎りの大事業だったが、開通して20年以上経った今ではその利便性は誰もが知るところだ。

終日1時間に1〜2本の高速バスが走って東京と木更津を結び、休日のレジャーでも多くの都民がアクアラインを抜けて房総を目指す。ついにゴジラの冒頭シーンで登場するほどになったアクアラインの存在感は、同じく都心と木更津方面を結ぶ房総特急「さざなみ」と比べるまでもない(「さざなみ」とアクアラインのバスでは所要時間はほぼ同じでバスが安く、特急を使わなければバスのほうがはるかに早く、勝負にならない)。

ローカル線は魅力いっぱい

そうしたわけで、1997年にアクアラインが開通してから「さざなみ」はその意義を低下させていき、運行区間も運転本数も減らされてしまった。言われてみれば、房総方面への観光はマザー牧場にドイツ村、内房の穏やかなさざなみでの海水浴。どれも家族や仲間とクルマで行くほうが便利に決まっている。

しかし、そうして「さざなみ」が存在感を低下させたなかでも、房総観光において鉄道は大いなる役割を果たす。小湊鐵道・いすみ鉄道・銚子電鉄というローカル線である(地元ではパー線と呼ばれるらしいJR久留里線を含めてもいいかもしれない)。

このあたりは鉄道や旅好きならば筆者よりも詳しいだろう。房総半島横断の小湊鐵道・いすみ鉄道はのどかな里山風景を楽しめるザ・ローカル線で、銚子電鉄は醤油の香りに誘われて「ぬれ煎餅」と「まずい棒」に舌鼓をうつおなじみの路線だ。

銚子電鉄は犬吠埼の突端を走るのでアクアラインとはあまり関係ないが、いずれにしても房総特急「さざなみ」を瀕死に追い込んだアクアライン開通が房総観光を身近にして、ローカル線の観光路線化をもたらすというのは皮肉なものである。

次ページ魅力いっぱいのローカル線
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事