ホテル三日月「武漢帰国者」受け入れで得た教訓 GoTo取り込みのカギ握る「感染予防」の舞台裏

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まだコロナ感染の実態が明確でなかった時期だ。当初は三日月に対し「なぜ受け入れるんだ」といった声も上がった。だが、病院による説明会を開催するなど地元住民とコミュニケーションを重ねると、心配の声は次第に応援へ変わっていった。そして2月13日に全員が退去するまで、スタッフや地域で一人の感染者も出すことなく、難局を乗り切ったのだ。

「三日月スタンダード」は、防疫の基本原則から客へのお願い、緊急時の対応などをまとめたもの。ホームページで公表している(記者撮影)

その後は全館の消毒を終えて、3月1日に営業を再開。緊急事態宣言の発令で4月7日に再び休業するが、ここで亀田総合病院と連携し、感染予防のガイドライン作りに乗り出した。

医師を招き、社員はコロナ対策の講習を受講。全体の方針にとどまらず、フロント、サービス、大浴場、ビュッフェなど、それぞれの現場でどう対策するかを病院側と詰めていった。「亀田総合病院の先生からは、正しく恐れることが重要だと教わってきた。すでに武漢帰国者を受け入れた経験があったので、違和感なく対策に取り組めた」(三日月グループ企画室の黒川大輔氏)。

ホテル内の至るところに消毒用スプレー

最近でこそ、感染対策がなされた施設ではクラスターの発生を防げるという認識も広がってきたが、三日月は日本中がパニックに陥っていた時期、すでに正しい感染防止の知識を持ち、冷静に対策を積み上げていたわけだ。GoToキャンペーン開始にあたっても、対象施設となるためにはコロナ対策の徹底が条件だが、問題なく対応できた。帰国者受け入れの英断によって裏打ちされた本物のノウハウが、ここで生かされたのだ。

ホテルでは、玄関での検温やアクリル板の設置、マスク着用のお願いなど、一般的な感染防止対策が確認できる。重視するのは小まめな消毒で、至るところに消毒用スプレーが置かれている。エレベーターの前、客室前の通路に加え、多くの客が集まるスペースに重点的に配置。大浴場(男性)では、入り口にひとつ、脱衣所の入り口にもひとつ、洗面スペースにも複数個を配置する。

さらに、全客室にひとつずつ。客が滞在中使えるよう、持ち帰り用の小型スプレーも渡す。スタッフもスプレーをつねに持ち歩く。

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