日本がアジア新興国のデジタル化に学ぶべき事 普及した分野とそうでない領域で差も出ている
なかでもアリババ集団の提供するソフトウェア「ディントーク」は、2014年12月にリリースされ徐々に利用者が増えていたが、コロナ危機のなかで企業や遠隔授業に採用されたことで、急速にユーザーを集めることとなった。
平安保険が提供するオンライン診療サービス「平安好医生(ピンアン・グッドドクター)」も、新型コロナウイルスの流行以前から利用されてきたが、危機のなかで多数のユーザーを集めた。
インドネシアでは、遠隔診療サービスを提供するベンチャー企業ハロドックが、インドネシア政府の保健省、さらには現地のプラットフォーム企業ゴジェックと協力して、新型肺炎向けの初期診療サービスを提供した。
このサービスではまず「過去14日間に熱があったか」「せき、鼻水、喉の痛みの症状があったか」「息苦しさはないか」「COVID- 19の陽性患者と接触したことはないか」といった質問項目でリスクを判定し、感染リスクがあると判定された場合に、医師との無料の遠隔診療に誘導するものである。
ゴジェックが提供する宅配サービスとも連動して、必要に応じて医薬品の配送も可能となる。
教育分野では十分な準備が追い付かず
以上はスマートフォンを基盤としたサービスの広がりが、危機のなかで活用されている事例である。このように、新型コロナウイルスの流行のなかでデジタル技術の利活用が広がっている。
しかし突発的な感染拡大ゆえに、十分な準備ができなかった領域もあった。特に教育分野では、遠隔授業が有効な手段として期待されたが、学生が十分なインターネットアクセスの設備と端末を持たなければ、そもそも実施できない。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の集計によると、2020年3月1日時点では学校を全国または一部地域で閉鎖している国は12カ国にすぎなかったが、4月1日には200カ国に達した。5月以降、徐々に学校を再開する地域も増えているが、その数は8月1日時点でも49カ国にとどまる。残りの161カ国では、依然として全面または一部閉鎖の状況が続く。
新興国でもインターネットが普及してきたとはいえ、動画再生可能な設備が行き届いている層はごく一部に限られる。それゆえ大規模な学校閉鎖の影響は甚大だ。遠隔授業を行う教師の側も、今までとは異なる教育環境のなかで、有効な教材や時間配分を考えねばならない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら