「コロナで失業」40歳男性はなぜ派遣を選ぶのか 1日の食事は袋麺1食、体重は35キロまで落ちた

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イサムさんのように緊急連絡先や身元保証人になってくれる親族がいないと、アパートを借りることが難しいうえ、登録できる派遣会社は限られる。「働くとしたら、(住まいがセットになった)寮付き派遣しかない。時給などの条件面でもよいところは選べませんでした」と言う。

さまざまな派遣会社で働いてきたイサムさんは、派遣労働の“裏事情”についても教えてくれた。

「派遣会社さんもピンキリなんです。犯罪歴のある人やギャンブル依存症なんかの人は、自分よりもさらに条件の悪い会社に行きます。なかには(経営に暴力団が関与している)危ない会社もあって、違法な『人夫出し』とか、賃金のピンハネとかもあります。

工場には外国人も大勢いますよ。ベトナムとか中国とか、フィリピンとか。彼らは技能実習生なのですが、同じ仕事でも日本人より時給が低いんです。ある工場で一緒だったベトナム人の女の子は『もう二度と日本には来たくない』と言ってました。コロナで自分たちよりも先に切られたのも日系ブラジル人でした」

寮付き派遣の「実態」

イサムさん自身の月収は「残業があるか、ないかで変わりますが、だいたい16万円ほど」。日中は工場、夜間は倉庫と、派遣を掛け持ちしたこともある。朝方に数時間の仮眠を取るだけの“超”長時間労働をして、月収はようやく35万円ほどになった。

また、寮付き派遣では相場に比べて異様に高い寮費を天引きされることがあったという。

イサムさんが働いていたある派遣会社では、毎月の寮費は家具付きで約5万円だった。寮といっても「築数十年以上のワンルームの民間のアパート」。ずいぶん高いなと思ったイサムさんがネットで調べたところ、派遣会社を通さなければ、約2万5000円で借りられる物件であることがわかった。

寮付き派遣の会社の広告の中には「工場に近くて便利」「お友達同士もOK!」「寮費無料」などとうたっているところもあるが、私が取材する限り、寮費がタダだったという人に出会ったことはない。イサムさんも「相場の倍くらいに盛ってくるんですよね。出るときに清掃費として5万円を請求されたこともあります」と話す。

仕事は入寮者に優先的に紹介されるので、収入を得るためにも寮に入るしかない。光熱費や社会保険料、携帯代などを払うと、イサムさんの手元に残るのは5万円ほど。「貯金をする余裕はありませんでした」。

さらに寮付き派遣の最大のリスクは仕事を失うと、同時に住まいも失うことだ。そのまま生活保護を利用する人も少なくない。ただ、イサムさんは生活保護だけは利用したくなかったという。

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