トランプ「経済政策」がこんなにも人気の理由 どちらが大統領でも「米国第一主義」は続く

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貿易協定を何十年と支持してきたバイデン氏は今、「すべてをアメリカ製に」という政策を掲げ、「連邦政府の総力を結集し、アメリカの産業的・技術的な優位性を高める」と約束する。新たな税制措置を打ち出すことで、企業にアメリカ国内での雇用維持・創出を促す、とも公約している。

トランプ氏をあまり好意的に見ていない有権者ですら、アメリカ経済はトランプ氏のおかげで活気を取り戻せたと考えている。

ベツレヘムで父が65年前に創業したタイヤの販売・修理・再生会社を経営しているウォルター・デルトリー・ジュニアさんは、2016年の大統領選挙でトランプ氏に票を入れたが、トランプ氏の大ファンだったことは一度もないと言う。

「彼はしゃべりすぎだ」。新品のタイヤの匂いから、どちらがグッドイヤー製で、どちらがミシュラン製か言い当てられるようになるほど長い期間タイヤ業を営んできたデルトリーさんは、トランプ氏についてこんな評価を口にした。「それに口調もひどい」。1年前は、バイデン氏やミネソタ州選出のクロブシャー上院議員など穏健派の民主党候補に投票する可能性も考えていた。

経済の舵取りではトランプを信用

しかし大統領選が目前に迫った今、デルトリーさんはもう一度、トランプ氏に票を入れるつもりでいる。春にはコロナ禍で売り上げが恐ろしいほど落ち込む月が続き、自らが経営する「サービス・タイヤ・トラック・センターズ」の従業員960人の一部を解雇しなければならなくなった。が、それでも経済の舵取りについてはトランプ氏を信用している。

デルトリーさんは、180cmほどある自らの身長より高く積み上げられた巨大なタイヤの山の近くを歩きながら、こう言った。「製造業を大きくする」ことを重視するトランプ氏の姿勢は気に入っているし、「この国に投資していいのだ、と企業に自身を持たせてくれた」点も評価している。

ただ、経済政策の論調の変化に対し、トランプ氏がどれだけ大きな役割を果たしたのかについては議論の余地がある。アメリカでは何十年も前から、雇用喪失に対する不満がふつふつと煮えたぎっていた。共和党と民主党の移民政策も、以前から二極化が進んでいた。中国の貿易慣行や技術の窃取、強権的な振る舞いに対する反感の高まりも、アメリカ国内にとどまる動きではない。

「これらの政策課題について、トランプ氏が本当の意味で既存の枠組みを超える何かをもたらしたとは思えない」と、保守系のアメリカン・エンタープライズ研究所でエコノミストを務めるマイケル・ストレイン氏は話す。

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