トランプ「経済政策」がこんなにも人気の理由 どちらが大統領でも「米国第一主義」は続く

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同様に、オバマ政権で大統領経済諮問委員会の委員長を務めた経済学者のジェイソン・ファーマン氏も、トランプ氏は自らの支持層を突き動かしたのと同じトレンドや力学に乗っかっているだけだと論じる。

煎じ詰めれば、トランプ氏が経済政策面でもたらした最大のインパクトは、自らの想定とはかけ離れたものになるのかもしれない。それは、財政赤字に対するアメリカ人の常識を覆した、ということだ。

トランプ氏は企業や富裕層に対して大幅減税を行う一方で、軍事支出を拡大し、高齢者向けの公的医療保険「メディケア」をはじめとする社会保障支出のカットも阻止し、財政赤字を数兆ドルと過去最悪の規模に膨らませた。新型コロナの緊急対策も、財政悪化に拍車をかけている。

財政赤字を「正当化」した

これまでの常識に従うなら、このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起こし、民間投資に悪影響を及ぼすはずだった。しかし、現実にそのようなことは起こっていない。

「トランプ氏は財政赤字を正当化する上で、きわめて大きな役割を果たしている」とファーマン氏は指摘する。

アメリカではファーマン氏をはじめ、連邦政府に対して債務の拡大にもっと寛容になるべきだと訴える経済学者や金融関係者が増えている。とりわけ現在のような低金利時代には、インフラ、医療、教育、雇用創出のための投資は借金を行ってでも進める価値がある、という主張だ。

もちろん、財政赤字をめぐる対立軸が消えたわけではない。民主党が政権を握ったとしても、財政赤字を伴う政策を提案すれば、共和党が反対に回るのは間違いないし、その逆も然りだ。ただ、連邦政府の債務が拡大すれば大惨事になるとの警告は、もはや以前のような重みをもって受け止められることはなくなるだろう。

(執筆:Patricia Cohen記者)

(C) 2020 The New York Times News Services

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