1880万円貸した男が語る「安易な借金で失う物」 「人に金銭を貸すメリット」はあまりに少ない

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なんだかんだで借金を全額返済してくれた人たちとの関係は今も続いている。一方で、返済してくれなかった人たちとの関係は切れてしまった。「金の切れ目が縁の切れ目」ではないが、借金がそれまで築き上げた信頼関係をいともたやすく壊してしまうのである。

私の親戚関係でもゲーム『ドラゴンクエストVII』に登場する「ホンダラ」のような「放蕩おじさん」が1人いて、彼が一族から借金を重ねていったせいで、一族の仲が険悪になってしまった時期もあった。

私が人に金を貸していたのは、20代後半~30代前半のときが多かった。今とは違って会社員として働いていた当時は、「まぁ、家族がいるわけでもないし、これから給料が上がるだろうからいいか」という妙な人情派として、友人らの窮地を救うべく金を貸していた。

だが、結果は回収率57.4%という惨憺(さんたん)たるもの。人間関係を壊すリスクがあるうえ、返済されない時期のやきもきとした気分を考慮すると、金を貸すことは百害あって一利なしの行為に思える。せいぜい「まっ、高い勉強料だったな」と悔し紛れに言えることぐらいか。

「借金を頼まれたら、そいつとは縁を切れ」

ここまで書けば読者にもすでに伝わっていると思うが、安易に金を貸してはいけない。冒頭で紹介した「金を貸したらあげたものだと思え」という考え方も、今のようなコロナや不況に悩む時代にはそぐわない気もする。というのも、みんな自分と家族のことを守るだけで手いっぱいだからだ。

もし過去の教訓を現代にアップデートさせるとしたら、筆者は下記のように言う。

「もしも借金を頼まれたら、そいつとは縁を切れ」

さんざん人の借金を受け入れ、今もそうした依頼を受ける身としては、この考え方がいちばんシックリくる。企業ならまだしも、個人間の借金は誰も幸せにしない。

それでも借金をしたいなら、まずは家族や親族を頼れと思う。これまで私に借金を依頼した人間の多くが、家族ではなく私を選んだのは、どこか「近しい人間に自分の恥部を見せたくない」「最悪の場合、返さなくってもいいだろう」というような気持ちが伺える。

それは自分の見えやプライドと、金を貸す私との関係を天秤にかけたうえでの選択ではないか。そう思ってしまった時点で、いたずらに借金を依頼する人間との縁は切ったほうがいいなと思うのであった。

中川 淳一郎 著述家、コメンテーター

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なかがわ じゅんいちろう / Junichiro Nakagawa

1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライターや『テレビブロス』編集者などを経て、出版社系ネットニュースサイトの先鞭となった『NEWSポストセブン』の立ち上げから編集者として関わり、並行してPRプランナーとしても活動。2020年8月31日に「セミリタイア」を宣言し、ネットニュース編集およびPRプランニングの第一線から退く。同年11月1日、佐賀県唐津市へ移住。ABEMAのニュースチャンネル『ABEMA Prime』にコメンテーターとして出演中。週刊新潮「この連載はミスリードです」他連載多数。

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