宇沢弘文の「社会的共通資本」が今、響く理由 コロナ禍で社会に本当に必要なものがわかった
「環境を守る」という観点から、「生態系を拡張していく」という積極的な姿勢にシフトしていく必要性もあります。ともすると人間の存在が、地球温暖化の最大悪であるとされることもありますが、実は今までで一番、生態系に影響を与えたのは植物の出現です。植物が酸素を作り始めたために、今まで存在していた酸素がない環境を好む嫌気性の生物は絶滅の危機にさらされました。
今、環境に一番大きな影響を与えているのは人間ですが、植物ほどの影響力はありません。とはいうものの、温暖化を悪化させる方向性から脱却していくために生態系に積極的にアプローチできるものも、また人間しかいないのです。ソニーコンピュータサイエンス研究所の舩橋真俊さんが構築された「拡張生態系」の理論を基軸に、宇沢が考えていた比例型炭素税を基軸とした国際大気安定化基金を実働できないか、模索しています(舩橋真俊さんの理論、参考記事「「協生農法」がもたらす見えざる“七分の理”――未来世代から資源を奪い続けないために」)。
資本主義でも社会主義でもなく
宇沢は「資本主義も社会主義もどちらも人間の尊厳や自然環境に対する配慮が足りない」といっていました。
しかし、市場の持つ力というものも信じていました。一人の人間が認識したり想像したりできる範囲は限られています。世界の大部分が一人の人間が想像できないもので出来上がっているとも言えます。その想像が及ばないものまでをも守ろうとする社会こそが、新型コロナウイルス感染症に強い社会ではないでしょうか。
このウイルスが明らかにした社会問題を踏まえ、真の意味での豊かな社会を構築する大きなチャンスが来ているのではないか、そして、宇沢の理論がそれに大きな力を与えてくれると感じています。
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