子育てセーフティネット「病児保育」に存続危機 65%が赤字、補助金減少で閉室する施設も
急な発熱で学校や保育園に行けなくなった。そんなときに子どもを一時的に預けられるのが病児保育だ。子育てのセーフティネットとして欠かせないが、新型コロナウイルスの影響による利用者の減少で経営が苦しくなっている。
新型コロナが流行して以来、小児医療機関を受診する患者数の減少が続いている。休校や外出の自粛、衛生管理が徹底され、風邪やウイルス性胃腸炎などの感染症にかかる子どもが減っているからだ。病気が減ったこと自体は良いことだが、小児科の役割は病気を治すことだけではない。
病児保育の利用者が急減
大分市にある民間の小児科専門病院「大分こども病院」の藤本保院長は「小児科は育児支援も重要な役割だ。育児のアドバイスをし、子どもや家庭の生活全体を見ている」と話す。
子育てのセーフティネットとなっているのが、急な体調不良で保育所や学校に行けない子どもを預ける病児保育だ。大分こども病院は大分市の委託で病児保育を運営しているが、発熱する子どもが減ったことから2020年1月以降、利用者が減少している。5、6月は前年比でそれぞれ約7割減少。9月に入ってからも利用者数は回復していない。
病児保育は国の子育て支援の主要事業の1つで、国の補助を受けて市町村が実施している。病児保育には急性期の「病児対応型」と回復期の「病児後対応型」があるが、病児対応型の場合は医療機関併設が約7割を占めている。
大阪市の委託で病児保育を運営する中野こども病院(大阪市旭区)でも、5月の利用者が激減した。2019年5月は160人だったのに対し、今年はたった18人。6月以降も前年比で7~8割ほど減少しているという。病児保育施設への補助金には利用者数に応じて適用される加算単価があり、利用者の減少は収入減に直結する。
「(利用者が)ここまで激減したらお手上げだ。病児保育は通常時でも赤字事業。しかし、いまは特に発熱したら保育園や学校には行けない状況だ。セーフティネットとして止めるわけにはいかない」(木野稔理事長)
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