子育てセーフティネット「病児保育」に存続危機 65%が赤字、補助金減少で閉室する施設も
もともと病児保育は利用の見込みが立てにくく、安定的な収入が得にくい。利用者の多くは前日に予約が入るが、子どもの熱が下がったり、親の都合が変わったりしてキャンセルされることが多い。中野こども病院のキャンセル率は40~50%にのぼるが、キャンセル料は取っていない。利用者が減っても一定数の保育士などは必要なため、赤字運営になりやすい。
採算が取れないことから、病児保育の運営をやめる病院もある。東京都昭島市の太陽こども病院は3月いっぱいで、昭島市の委託で運営していた病児保育を手放した。
同病院の木内巻男院長は「病児保育は自治体によって支援に大きな差がある。利用者の需要はあったが、ずっと赤字状態だった。現在は施設内に場所を提供し、市の医師会が運営している」と話す。
病児保育施設の65%が赤字
厚労省が6月、病児保育の経営状況に関する初の全国調査を公表した。それによると、2018年度は施設の65%が赤字だった。収入が安定しないため職員の確保が難しく、確保した職員への処遇改善もできないといった声もあがる。
そこを直撃したのがコロナ禍だ。全国病児保育協議会が加盟860施設と非加盟の病児保育施設に対して6月に行ったアンケートによると、緊急事態宣言後の利用者は4月が前年比で67%、5月は85%減少した。6月時点で市町村からの補助金が減少したという施設は回答のあった434施設のうち62施設にのぼった。
アンケ―トでは「委託事業なので行政の要請で開けていたが、ほとんど利用がない状況だった。それなのに加算分が減るのはおかしい」「当市では補助を出すつもりがないため、閉室するしかない」という声があがった。
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