「社会貢献する人」と「しない人」の決定的な差 「自分起点の社会善」積むトレイルブレイザー達

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岡ひとみ(以下、岡):私が所属する経営コンサルファームに対して、SDGsという問題解決の視点から、企業がもともと持っている強みを活用して、新規事業を立ち上げたいという問い合わせがかなり多いです。

岡ひとみ(おか・ひとみ)/2013年に大学を卒業後、独立行政法人国際協力機構にて、発展途上国の経済特区開発、産業政策策定に関する案件を企画・担当。2016年より外資系コンサルティングファームにて、新規事業の立ち上げ、中期経営戦略、M&A統合案件などに従事。プライベートでは、女子大生のキャリア支援を行う「ゼロイチ女子」プログラムを運営(写真:本人提供)

今、日本企業の間で、慈善活動という形ではなく、自社の事業の範囲内で、利益を確保しながら社会問題の解決に貢献しようとする意識が高まっているように見えます。日本で企業による政治的介入が進まないのは、経済界のリーダーとして、名前と顔が知られていて、なおかつ発言の影響力が強いという人物が少ないこともあるでしょうね。

アメリカでは、顔の見えるリーダーがSNSで発言することで、国民の気持ちを動かしたりします。日本のリーダーは、政治家に直接ロビイングしたりしますから、表立っては活動が見えませんよね。

:日本の大企業って、「今、あの企業の社長は、誰ですか」と聞かれても、顔が浮かばないところが多いですよね。

樋口:確かにそうですね! 日本の企業も、企業の成長のためには、社会価値を生み出すことが重要だということは、かなり意識しています。

ただし、企業と社会がコミュニケーションするという点において、コーポレートブランドが中心になっている印象があります。ベニオフさんのように顔の見えるリーダーから、一貫したメッセージを伝えるという手法をとったほうが、メッセージが伝わる可能性が高いのでは、とも思いますが。

:日本の大企業は、何をやっている会社なのかが一般の人にはわからないことも多いですし、いきなり「全社として社会貢献に取り組んでいます」と言われても、「何するの?」ということになる。わかりやすさを求めて、植林など、本業と関係ない活動をするケースも見られますね。

例えば、商社が「わが社が扱うチーズは、すべて環境に配慮した牧場から仕入れています」というように説明されれば理解できます。その事業を回す過程でいかに社会に貢献しているかがわかるほうが素敵だなと感じます。社会貢献と事業とを切り離さずに一体として取り組むことが重要ではないでしょうか。

個人が社会貢献する「自由」を担保する統合的アイデア

:私は、この本の重要なポイントは、セールスフォースが、従業員にボランティア活動を強要していない、ということだと思っています。自分の選んだボランティア活動のために有給休暇が与えられるというのが、面白いですね。

私の会社にもボランティア休暇の制度はあります。しかし、それが社内ブランディングになっているとは言えず、申請してもおそらく「えっ、それ本当に使うの?」という反応を受けそうなのです。

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