「人前で泣くリーダー」が経営学の世界最先端だ 日本人はなぜ「ベニオフCEO」になれないのか?

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社員と価値観を共有し、共感できるリーダーが必要とされています(写真:metamorworks/PIXTA)
創業20年で従業員数5万人。世界最大級の顧客管理(CRM)ソフトウェア企業であり、GAFAに並ぶ巨大IT企業であるセールスフォース・ドットコム。
同社のユニークな、成長と社会貢献を両立させるという企業文化を、創業者マーク・ベニオフ氏が生い立ちから企業理念、社会への思いからつづった『トレイルブレイザー――企業が本気で社会を変える10の思考』の日本語版がこの夏に刊行され、各所で話題になっている。
いま最も話題の経営書『世界標準の経営理論』の筆者で、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏は、「セールスフォースは未来的な意味で成功し、マーク・ベニオフはきわめて未来的な経営者で、日本のビジネスパーソンも学ぶところは多い」と高く評している。
本稿では、入山教授が『トレイルブレイザー』を受けて、世界の経営学に見るセールスフォースとマーク・ベニオフの思想について語る。

お金→ビジョン→バリューベースの時代へ

これは、めちゃめちゃいい本ですね! すごい本だし、素晴らしい。日本の経営者とか企業が学ぶべきところは、ものすごくあるのではないでしょうか。多くのビジネスパーソンに手に取ってほしいですね。

『トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

この本では、セールスフォースが同社のバリュー(価値観)やそれに紐づく社会貢献を重視し、営利目的だけでなく多様なステークホルダーの幸せを考えながら経営している様子が詳細に描かれています。世界のビジネスの流れは間違いなく、こちらに向かっていると私は思います。

企業経営において重視されるものは、時代によって変わります。拙著『世界標準の経営理論』でも書いたのですが、高度経済成長期には「お金がすべて」という流れがありました。なぜなら、当時の日本人はまだ物質的に豊かではなかったから。経済は右肩上がりで給料も増えていく中で、物質的な欲求が優先されました。

その後、先進国ではそういう時代が終わりつつありますが、一方で成熟してきたからこそ、変革すなわちイノベーションの重要性が高まりました。そこで次に重視されるようになったのが、「未来へのビジョン」だと私は考えています。

実際に今、世界中で急速に伸びている会社には、ビジョンの強いリーダーがいます。孫正義さんやイーロン・マスクさんなどが、典型ですね。

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