「大学に通う意味」が根本的に問われているワケ リモートで提供できない価値はいったい何か

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ごく当たり前のことと思われてきたことに本質的な問いが突きつけられています(写真:y.uemura/PIXTA)
昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第29回。

リアルな講義がないことへの学生の不満

テレビ会議などを用いるオンライン化が進んでいます。オンライン営業、オンラインディーラー、オンライン保険契約等々。

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「リモート観光」と称し、バーチャルで行けるという観光サービスもあります。

こうしたことが進展するにつれて、「どこまでをリモート化できるだろうか?」という問いが生じています。

逆に言えば、「テレビ会議のような手段では決して代替できないリアルのサービスはあるのだろうか?」という問いです。

完全リモート化が簡単ではない分野として、大学の講義があります。

「オンラインであれば、従来と同じ授業料ではおかしい」という不満が学生から上がっているのです。

学費が高いアメリカでは、とくにそうです。コロンビア大学、パデュー大学、ミシガン州立大学などの学生が返金を求めて訴訟を起こしています。

オンラインのみのカレッジが数分の1の費用で同様のコースを提供しているのに、リモートだけのクラスに3万ドル以上の学費を支払うのは不合理だ、という意見です。

留学生からも不満が出ています。アメリカの大学に留学が決まった日本人学生。しかし、アメリカに行くことができず、日本の自宅でオンラインの講義を聞くだけ。それなのに、高額の学費を払わなければなりません

また、「小、中、高校がリアルな授業を再開しているのに、なぜ大学だけがオンラインを続けるのか」という不満を持っている学生が多いようです。

通常、オンライン講義に対して問題とされるのは、次のようなことです。

対応できない教員がいる、回線容量が十分でない、機器を持っていない学生がいる、自宅の部屋が見えてしまう、等々。

こうした問題が現実に大きな制約になりうるのは事実ですが、これらは、原理的には解決可能なものといえるでしょう。

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